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自転車に萌え?

先週、『なみだ』の原稿をあげて『TASUKE』にかかるちょっとした隙間に、本屋に出かけて数冊、本を購入してきた。昔から僕は仕事が一段落して、なおかつ映画を観に行くほどの余裕がない時は、よくストレス解消代わりに本屋でその時目についた本をどか買いする癖がある。

先週買ったのは『むかつく二人』(三谷幸喜と清水ミチコの対談集。とりあえず、何も考えずに読めそうということで)、『愛国の作法』(一応、姜教授のファンだったりして)、『ホスピクラウン』(小児科病棟で、子どもたちを笑わせるピエロのようなことをする人の体験記。いずれネタになるかもしれないと(^_^;))、『出雲からたどる古代日本の謎』(最近、妻の弟くんが故郷である島根の郷土伝承に凝っていて、つい影響されたか?)。

それと、高千穂遙さんの『自転車でやせた人』である。

高千穂さんといえば、僕らの世代で多少SFに凝ったことのある人間なら、「スタジオぬえ」の名前とともに思い出すかも知れない。アニメ好きなら『クラッシャージョウ』とか『ダーティペア』シリーズの原作者として覚えているだろう。僕はアニメ派だったので、後者。だから、名前だけは知っていたが、実を言えばこの人の小説は読んだことがなく、強いて言えばアニメの『クラッシャー』や『ダーティ』シリーズのファンだった時期があるというだけの間柄だった。……間柄か?

とはいえ、ここらへんの作品がアニメでヒットしたりしていたのは、いまからもう20年以上前の話。だから、あくまで僕個人にとっての話だが、高千穂さんは過去の人だった。本屋でこの本を手に取ったのも、『自転車でやせた人』などという、およそ新書のタイトルにはあまり見かけない類の言葉につられてであり、高千穂さんがこんな本を出しているという意外さは、手に取った後、よくよく表紙を見てから気づいたことであった。

ただしそれだけなら、へええ、あの人はいま、こんな本も書いているのかあという、何か、しばらく見かけなかったミミ萩原が、占い師だか霊能者だかになって出していた本を見つけた時と似たような軽い驚きを覚えただけで、すぐ本棚に本を戻していただろう。そうしなかったのはまず、帯に印刷されていた高千穂さんの写真だ。50歳の時と、54歳の時の写真が並んで印刷されている。違う。確かに全然違う。さらにその横に書かれていた文字に、僕の目は吸い付けられたように動かなくなった。50歳、体重84キロ、体脂肪24%→54歳、体重59キロ、体脂肪9%! す、すごい! ほんとか、それは? そう思った次の瞬間、僕は他の本と一緒にこの本も重ねてレジに出していた。

実を言えば、50歳、84キロ、24%というのは、ほとんどいまの僕と変わらない条件である。このあまりにどんぴしゃな条件設定がなければ、いくら何でも中味も見ずにこの本を買ってしまうようなことはなかっただろう。その意味では、本との出会いというのも、人間と同じく運命的なものである。ああ、この本はいま、この俺に向かって真剣を突きつけている。思わず、そんな感じに陥ってしまったのか。いや、それはちょっとかっこよく言い過ぎたかもしらんが。

実際、僕はいままでいわゆる健康本とか、ましてダイエット本の類に金を払ったことはもちろん、読んだことさえ一度もない。はっきり言って、本なんかで説かれるダイエットで成功するためしなどないと思っているし、本気でダイエットしたいなら、確実な方法はカロリー制限と適度な運動を毎日行なうことに勝る方法などあるわけないからだ。ただ、やはり高千穂さんの写真のインパクトが大きかったのと、自転車という、それまでまったく僕の死角にあったアイテムが、この本によっていきなり目の前にぽんと出されてきて、え? そういえば自転車って……どんなもんだったっけ? と、改めて別の興味が湧いてきたということがある。

で、高千穂さんの本は、読みやすかったこともあるが、その日のうちにほぼ読破した。読み終えての結論。僕には無理。だってやっぱ凝り性というか、こだわりのある作家さんは違うというか、この人は自転車への嗜好に目覚めてから、本当に求道者になっちゃってる。週に4日も60キロ走っていれば、そりゃ体重だって30キロくらい減るでしょ。いやあ、自堕落な生活の中でどよどよと生きている僕のような人間には、はっきり言ってこの人の真似は出来ない、と、すぐに思いましたよ。ええ、ほんと。無理無理。……ただし。

不思議なことに僕はいま、それでも自転車、いわゆるスポーツバイクの世界に、かつてはまったく感じなかった興味を持ち始めているのだ。もちろんそれは高千穂さんの本を読んだせいである。『自転車でやせた人』の中で書かれているのは、結局、自転車でダイエットしましょうという話ではなく、それはあくまで自転車を生活の中に最大限にとりいれていった、すなわちライフスタイルを自転車と、強烈な意志の力によって変革した結果に過ぎず、つまりある人間の人生にそれだけの影響力を及ぼす自転車という存在の力強さこそが、多分この本で著者が描き出したことではないのかと、そんな印象を受けてしまったのだ。

だってね、自分には絶対真似できないと思いつつも、でもいままで一度も乗ったことのないスポーツバイクって、なんかよくわからんが面白そうな気もする、ちょっと乗ってみたらどんな気分になるのだろう、なんて気に、やっぱなってるんだもんな。だいたい僕は、惚れやすい、ノリやすい、騙されやすいと、三拍子そろったお調子者だということを自覚しているから始末に悪い。土曜に高千穂さんの本を買ってから、この3日ですでにスポーツバイクの入門書を2冊買い、自転車ライフの専門誌を一冊買い込んで便所に入るたびに読みふけっている。この調子ではどうやら、今月中にも我慢がきかなくなって、突然どこかの自転車屋に駆け込んでいるかもしれない。

というわけで、この顛末は、またここでご報告することになるかもしれないが、熱しやすく冷めやすいのもまた、同時に抜きがたく併せ持っている僕の悲しいさがなので、この話題がこれだけで消えたとしても、決してそのことへの突っ込みなどは無用になさるよう、あらかじめお断り(^_^;)

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コメント

旦那〜自転車御探しですか?
乗り物ならあっしに聞いておくんなさいよ。
お邪魔しやした・・・・痩せたい?

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