今期注目のドラマ

もうまともに映画を見に出かける時間がないので仕方なく録画した映画などを、42インチプラズマテレビで見とる日々であります。

ちなみに今期は久々にドラマでも、毎週録画して見ている番組が出来た。久々に、と言っても『野だめ』以来か。タイトルは『わたしたちの教科書』。

第１話を新聞の番組欄か何かで、弁護士ものかと勘違いして一応録画したのがきっかけ。もしも学校ドラマみたいな紹介のされ方していたら、いまの学校ドラマなんぞ、なあ～んも期待できないし、そのうえフジテレビのドラマだとなれば、どう考えても素直に見る気になったとは思えない。ところがこれは意外な誤算だった。日本のドラマとしては相当久しぶりに、ドラマの孕む内容そのものだけで、興奮を覚える作品であった。

見てない人のために簡単なイントロだけ説明しておくと、ある中学の新任教師として赴任した熱血チビノリダーが、初めて担任したクラスに不登校の少女、志田未来ちゃんと出会う。彼女は女王の生徒だった頃とはうってかわって、不幸の匂いをぷんぷんさせた少女なんだけど、この彼女の周囲に曰くありげな女弁護士、富江菅野美穂なども出現してきて、何やら謎は謎を呼んでいきそうな気配になるのかと思いきや、少女はノリダーの熱意ある説得で学校に登校してきたその日、教室の窓から落ちて死んでしまう。果たしてそれは事故か事件か。そして明かされる、富江菅野と未来ちゃんの意外な関係。なにい～～～っ？　とか言ってるうちに第１話は終わる。

意外な展開の連続ではあるが、無理矢理作った意外さやあざとさはなく、ちゃんと筋は通っている。しかも登場人物が主要から脇役に至るまで、とにかく全員ただの善人は一人もいない。てゆーか、はっきり言えばみんな嫌な奴である。主人公のノリダーにしたって、いまどき熱血な情熱を持っていまの教育現場に乗り込んできたら、うざいことこのうえない。現実的にはこんな先生がいたら、迷惑に感じることの方が大きいだろう。

先日第２話も見たが、物語の緊迫感は持続されたまま、さらに悲惨な話が語られていく。はっきり言ってヒロイン役の菅野も、これはホラー映画かと思うような無表情芝居をしているが、これがその役のキャラにぴたりとはまっており、僕などはドラマを見ながらちゃんとこのヒロインも憎悪できた。

あえてステレオタイプなキャラ分類として、善玉か悪玉かといえば、恐らく今後は善玉側的立場を受け持つはずなのに、この脚本家はそんな一筋縄なシチュエーションは拒否している。こいつが諸悪の根源かいと思いたくなるくらい、ちゃんと嫌あなキャラに仕上がっている。さらに死亡事故を起こした直後の学校の対応も、リアルと言えばリアルで、熱血だったはずのノリダーもいつの間にかちゃんと学校側の理屈に取り込まれているという描写もうまい。

物語は今後、どのような展開を見せるのか、まだ予想もつかない。僕のありきたりな頭で推測すれば、結局これは菅野の贖罪の物語になるのだろうとは思う。ただし、彼女自身も恐らく犠牲者なのだ。とすれば後々、彼女の親が現われるか、少なくとも彼女自身の親との関係はどこかで説明されるだろう。あるいはノリダーの職場である教育現場において、誰も何の希望も持っていない教師たち。彼らのうちの誰かに何か奇跡が起きるのだろうか。ドラマで奇跡を語るためには、完膚無きまでの現実の救いの無さが描かれなければならない。その意味で２話は、途中で見ているのがつらくなるような展開もちゃんと配置されていた。

とはいえ、この脚本家は多分、類型パターンを巧妙に外しながら、まだまだいろんな手を見せてくれるのではないかという期待を感じさせてくれる。こちらの予想をうまく裏切りながら、ぜひとも魂が震えるようなクライマックスに我々お客を導いていただきたい。僕らの暮らしからも感覚からも遊離した、華麗なる人々の話や漫画な話なんか興味はない。いま見たいのはちゃんとしたドラマだ。自分たちの魂が試されるような物語だ。今期、この『教科書』だけはどうやら最後まで見届けることになりそう。

ちなみに喫茶店でスポーツ新聞に載っていた番組視聴率ランキングを見ていたら、ランキング的には新ドラマはほとんど全滅。まあ、特番やらスペシャルやらが入っているから、これだけで判断は出来ないが、上位はほとんどバラエティ関係で占められている。かろうじて５位か６位あたりにランクされていた、新ドラマで一番視聴率がよかったのが織田裕二の『冗談じゃない』とかいうドラマ。

私、これも第１話は見ました。あまりのあほらしさに冗談じゃないと思って、途中で消しました。ある意味、タイトル通りだったか？