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久々に・・・

テレビで録りおきしておいた番組の中から、『殯の森』を見る。

これ、確か映画の公開前にBSで先行特別放映とか言って放送したもので、えーっ、公開前の映画を放送しちゃうの? すごいじゃん! と思って録画しておいたらいつの間にか公開自体も終わっていたというものだ(-_-;)

で、食後の腹ごなしに部屋の明かりを消して見始めたら、妻はものの数分も経たないうちに熟睡してしまった。まあ、景色もいいし、画面はきれいに作ってあるから、いい環境ビデオみたいになったのかも。

ただ、これを面白いかと人に聞かれたら、僕ははっきり言ってつまらないと答える。途中でもう止めたくなるような画面ではなく、何となく最後まで見てしまったけど、まさにこの何となく感がずうっと映画の中を流れているような映画。カンヌで受けたというけど、向こうの人は日本の風景が美しく撮られていると、とりあえず点が甘くなる傾向があるのではないか。

話の内容は・・・

簡単に言えば、奈良の田舎のグループホームで暮らす認知症の老人と、新人職員の話。前半はその老人の世話をする新人職員のお姉ちゃんと、ときどき突飛な行動もするけれど、それなりに愛嬌もある老人とのまったりした交流が描かれ、後半はその老人を連れて車で外出した時に、たまたま車が事故か何かで動けなくなって、彼女が助けを求めて車を離れた隙に、そのお爺ちゃんが車を抜け出して山の中へ入ってしまう。戻ってきた彼女は老人を追いかけて山の中へと進んでいき、次第に二人は山中で遭難のような状態にまでなってしまって、それでも老人は山中に分け入っていくことをやめない。それはなぜか・・・てな展開の話である。

まずこの話、会話が極端に少ない。主人公やヒロインの状況を説明する必要最小限の会話や回想場面はあるものの、思い切り見る側が想像力を働かせないとつながっていかない部分がある。あと、そのセリフもけっこう良く言えばナマな感じではあるが、悪く言えばときどき声が小さくて何を喋ってるのか聞き取れないこともある。

つまり、何か前提となる必要な情報がちゃんと観客に伝わってきてない、あるいは意図的に伝わりにくい映画にしてあるのかもしれない。外人が字幕見て展開がわかるなら、日本語でもつけてほしいと思ったくらいだ。だからクライマックスの本来なら感動すべき部分も、なんで? なんでこうなるの? という疑問が先に立ってしまって、うまく入り込めなかった。凄く悪意に満ちた言い方をすれば、こういう舞台でこういう風な展開に話を作れば、ほら、けっこう芸術的でしょ? みたいな感覚があるような気がしてならない。

認知症というテーマは僕にとっても切実だし、この監督はけっこう昔からちょっと可愛いなと感じていたこともあって、応援はしたいんだけれど、この映画に関しては僕は乗れない。老人と職員はそれぞれ喪失した家族を持っていて、要するに「喪の仕事」として胎内のような山中をさまようことになるのだが、僕が最近この手の映画に感じることは、未熟な隠喩に満ちた映画を作るくらいなら、いっそストレートに物を言って欲しいということだ。だってどんなきれいな画面作ったって、客に伝わらなかったらダメじゃん。

まったく関係ないが、この映画の冒頭の方を見ていて突然、もう20年以上前に観た柳町光男の『さらば愛しき大地』を思い出した。あの映画の断片、場面やセリフやその時の役者の表情など、いまでもけっこう思い出せる部分がある。いかにあの作品が緊張感に満ちた画面を作っていたかの証左だ。それに比べればこの映画はぬるい。多分あと20年もしたら、ほとんどあとかたなく忘れてるな。もしかするとそのときは、自分の名前も忘れてるかもしれないけど(^_^;)

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