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正月に見たVideo

正月、頭がぼうっとして仕事にならなかった間、仕方がないのでテレビで見ていたものの話でも。

まずWOWOWで撮っておいた『ロード・オブ・ウォー』。ニコラス・ケイジが、世界の紛争地域に武器を売りつける武器商人の役を嬉々として演じている物語だが、この主人公にも実在のモデルがいるらしいというところが笑えない。『24』にも言えることだけど、最近のアメリカ映画の中って、人命が羽毛より軽く扱われる描き方が多用され、情け無用の実に殺伐としたシーンが増えてる気がする。

そう感じるのは何より命の存続にこだわる戦後日本人の感性(最近はそれもかなり怪しいもんだと思うが)だと言われりゃそうかもしれないし、実際、人命が軽い地域や国がいっぱいあるのが世界の現実だと言うなら、そうですかと言うしかないが、まあ、僕の場合はそれでも基本、命、上等! っすから。そんな僕を親方などはアカと呼ぶが、あいにく僕はアカと呼ばれるほどの学はない(-_-;)。ただただ我が身大切な世界観を後生大事にしていたいだけである。

だから僕みたいな人間にとって、『ロード・オブ・ウォー』のような世界は本来、吐き気を催すほどの世界なのだが、映画はその武器商人の人生を極めてテンポ良く、スピーディーに見せていくから画面的にはほとんど退屈しない。さらに最後に用意された痛烈な皮肉によって、この映画はかろうじて社会派と呼ぶべき範疇にとどまったものの、主人公の行動自体は終始一貫していて葛藤も苦悩もほとんど見せず、人間ドラマとしての深みや感動はない。ただ、見終えた後に映画の中でかいま見せられた世界の「現実」に冷え冷えした感触が残るだけである。確かにそのあたりはリアルと言えば妙にリアルだったりするのだが。

もう一本、録画してからずいぶん見なかった『武士の一分』も見る。一応話題になった作品だし、主演のキムタクには興味がなかったものの、前に見た『たそがれ清兵衛』が意外と気に入ったのでチェック。ちなみに藤沢時代劇の最高傑作にあげられることも多い「蝉しぐれ」は、NHKのドラマと原作を読んだだけで、僕はまったくハマれなかった。なんかしんきくせえ話な感じがしたもので(^^ゞ。ただしこれは、趣味の問題だろう。

映像化された藤沢作品で、いままで僕が見た中でのベストはNHKの『清左衛門残日録』だが、これだって僕が20代の頃に見てたらここまで毎回感動したかどうか。あの作品に出会ったのは僕が40前後くらいの時期だったが、50の坂を越えて再見すると、また新たな発見や感動がある。確実に自分も老いていくという現実と、まだまだ現役だという気分。年を経てずいぶん立場や考え方も変わってしまった昔の友人たちなど、いまの自分にも切実に重ね合わせられるテーマが随所に盛り込まれている。もっとも、あのドラマをあそこまで盛り上げたのは、主演の仲代さんより財津さんの力が大きいと思うが。

『武士の』では、時代劇監督に転身した山田監督の手堅さは存分に出ていて、画面的にもまあ安心して見ていられる。話も藤沢作品にしては珍しく、かなり単純なハッピーエンドで、物語としての好感は持てた。ただね、やっぱ主演の人に違和感が残る。そのキムタク独特の絵としての存在感もそうなんだけど、なによりセリフの間が違うというか、そういう間合いの端々に、キムタク節が透けて見えるというか。つまりそういうところで、ちょっと僕なんかは鼻白む。

妻の評価は、キムタク意外と頑張ってたじゃないの、というものだ。世間の評価も好意的らしいが、そうかなあ。頑張っていることと、その役に客をうまく引き込んだかどうかはまた別の話。強いて誉めれば、キムタクの殺陣の太刀筋は意外と良かった。それくらいかな。

年末に大洲斎監督の『ひとごろし』をやってたので、これも見た。もう30年くらい前の映画だけど主演は松田優作。原作は山本周五郎で、すごく臆病で小心者の侍が、藩内随一の剣の達人を臆病者らしいやり方で追い詰めていく物語。この時の臆病侍役の松田優作を見て、ああ、『武士の一分』の主人公は、この優作ならぴったりだったのにと。ま、それだけの感想。

映画自体は、当時のテレビの2時間時代劇の枠から外れるほどの作品ではない。逆に言えば、この頃は映画にかけられるほどのレベルの時代劇が、テレビドラマとして手軽に見ることができた。『ひとごろし』はたいして面白い作品ではないが、それでもいまのテレビで見られる時代劇と比べれば、役者の質もフィルム画面の色合いと奥行きも、まったく違う。いま思えば贅沢な時代だった。

妻が冬休みの間に『冬のソナタ』をもっぺん最初から見たいなどと言い出すものだから、レンタル屋に付き合い、そのついでに僕も気になっていた映画を2本借りてきて見た。

1本はホイチョイの『バブルへGo!』。もう、冷静な思考力とか論理力とかそういうものを一切頭からすっ飛ばした上でないと見られないお気楽おバカ映画。一言で言えば『Back to the Future』の下手なパロディみたいなものだが、前半は意外と楽しめた。後半はけっこうぐだぐだ。どうせこんな映画だからクライマックスまでふざけまくるのは別に構わないし、それは承知の上で見ているものの、演出的な詰めの甘さが目立ちすぎると、やはり我慢にも限界がある。たとえば大団円の悪人たちとの対決場面だって、あれだけぬるいと、学芸会の芝居か新年かくし芸大会の演目コントでも見せられている気分。まあ、見終わっても見事に何も残らない映画だから、いまさらそんなこと言うのも気が引けるほどだが。

もう1本は、やはり前から気になっていた『嫌われ松子の生涯』。ついに借りて見る。確かこの監督は前作が『下妻物語』ではなかったか。予告か何かを見てキワモノじゃんと思って見ないでいたら、誰かに勧められたので見てみた。確かに面白かった。土屋アンナってこんなに面白い女優だったかと思って、彼女の芝居まで見たほどだ。

でも『嫌われ』も同じパターンで、予告とかポスター見たら明らかにキワモノ風。先にテレビドラマで内山理名主演のものを最初の方だけ見て、なんかしんきくせえ話だなっ、と思ってもう原作にも近づかなかった。でも映画はけっこう話題を呼んだことだけは覚えていたので、まあ、もののついででおまけに正月だし、ということで借りてきた。

はっきり言って、これも僕の食わず嫌い。映画館で観なかったことが悔やまれる。もうこの監督の持ち味になった、相変わらず過剰な色彩と演出は健在だが、それが本来は展開だけ見れば暗く切ないこの物語に、凄まじいパワーと活気を与え、笑えて楽しくて泣けてしみじみする。単に面白いというだけではなく、こんなガチャガチャな話なのに、なぜか見終えた後、胸にずーんと残るものがある。

たとえばティム・バートンあたりが苦手でない人なら、あるいは『シザー・ハンズ』に感動できる感性を持った人なら、絶対大丈夫。そうでない人も、一応見てもいいんじゃないかな。ときどき僕に、いまどんな映画が面白いかと聞かれて、たいてい僕は答えに窮するのだけれど、久々にこれは人に勧めてみたい映画である。お暇なら是非。

他にもこの正月、どこにも出かけないで水を吸うようにいろいろ見ていたと思うが、なぜかけっこうもう忘れている(^_^;)。何か書きたいことを思い出したら、またその折々に。

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コメント

「新釈・真田十勇士」はご覧でしょうか。
 アニメですが、真田太平記を下敷きに講談の十勇士を絡ませた内容で、かなりいけます。銀英伝スタッフの歴史モノといえばわかりやすいでしょうか。
 正直、関ヶ原では知らない武将もいっぱい出てきて歴史ファンの知識を問われるところだったりします。
 現在、Gyaoでも放映中ですが、残念ながら九度山蟄居のところまでは今日の昼で終了。僕もあわてて昨夜見ていましたが、レンタルでもでているのでは?
 宇治谷さんも必ず満足できるアニメですのでお勧めです。

>Pete
もちろん知ってま(^。^)。てゆーか、これ去年か一昨年あたりWOWOWでやってたのよ。確かWOWOW用のアニメじゃなかったかな。

で、僕も銀英伝のスタッフが、というアオリ文句に引かれて、最初の2~3回は見た記憶があるけど、なんだか銀英伝より全然子ども向けに思えて、見なくなってしまったのでした。

もちろん物語としてはまったくイントロ部分なので、あれから関ヶ原に向けて盛り上がるのだろうか。君が勧めるならもう一度見直してみます。

でも去年買った「ガンダム」のDVDボックスも封も切ってないし、小説さえ終わったらいろいろ一気見したいナニがもう溜まっちゃって爆発寸前(^_^;)

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