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冬ドラ雑感。

今シーズンは忙しくて、ほとんどテレビの新番組を鑑賞している暇がない。

そんなわけで、とりあえず気になったものだけエアチェックしといて、夜中の仕事の合間とかに、ちらちら流し見したり、どうかすると倍速再生なんて封じ手を使ったりしている。どうせ元からそんなに期待はしていないと強がってみせても、意外な拾いものを見つけたりすると嬉しいし。

以下、感想。

『薔薇のない花屋』
オープニングは女性のビデオメールから始まり、どうやらその女性が自分の出産と引き換えに命を失ったという暗示。薔薇の花を持って病院に駆けつけた恋人か夫の香取慎吾は彼女の死に間に合わず、代わりに生まれ落ちた小さな命、つまりその娘を一人で育て始め、やがてその子が小学生になった頃、念願の自分の店、小さな花屋を持つ。ここまでの展開が冒頭から10分くらい、ビデオメールの部分を除けばまったくセリフを入れず、画面展開のみで娘の成長に合わせて見せていく。ここはベタベタの展開ではあるが、とりあえずつかみは成功かな。

で、肝心の本編が始まると、小学校に通う娘はなぜか覆面をして通学しているわ、香取の前に現われた謎の女、竹内結子は盲目だわ、おうおう、野島ワールド全開かと思わせておきながら、なんだかこの二つのネタとも第1話の中で底が割れる。もうちょい引っ張ってもいいんじゃないかと思ったが、最近の視聴者は我慢がきかないから、謎を引っ張られると嫌気がさされるという計算が働いているのかもしれない。

もちろん、視聴者を飽きさせないように次から次へと別の餌が撒かれるのだろうとは思うが、僕は最近、そういう安い計算の働く話にはあまり食指が動かない。せめてこちらの心に響く展開やセリフを週に一個は見せてくれないと、どうでもいいんじゃない? という感じになってしまうのだ。

第2話だったか。香取の部屋の場面で、バックの本棚にちらっと一瞬画面に映ったその本の背表紙がなんと「人○革○」。これってかのジャイヤントロボ操縦少年の名を持つ先生の名著ではないのか。いやあ、さすがSMAP。あるいは脚本家の意向なのか、真相はわからないし別に興味もないが、こういうドラマでは、たとえば劇中で使用される商品一つにもかなりの注意が払われるはずだ。それをあんな場面でさりげなく背表紙を見せたりすれば、あの団体のパブやってんのかととられても仕方ない。それが嫌なら『続戦国』も一緒に並べてくれ。

ま、今後、このドラマがどんな展開を見せるのかまだまだ波乱を含んでどうのこうのというところだろうが、僕は正直、この時点で興味を失ってジ・エンドでした。

『鞍馬天狗』
実は始まる前は意外と期待していた。なぜなら萬斎様ファンだから。特に時代劇をやる時の萬斎様は素敵。ただ悲しいかな、彼は役に恵まれても脚本に恵まれない。陰陽師の晴明なんて、映像化すればまさに萬斎様のために存在するとしか思えない役なのに、脚本があまりにぐだぐだなため、もうその中で頑張っている彼の姿が痛々しく、2本ともまともに目を向けていられなかったほどだ()

そんなわけで僕の萬斎様ベスト配役は、ドラマ自体はぐだぐだだったが、役としては面目を保っていた、もうずいぶん前のNHK大河、タイトルも忘れちまったが三田佳子が日野富子を演じた時にやった、応仁の乱の張本人細川勝元である。初めて見た時、あのヘビ目の役者はいったい誰かと思って調べ始めたのが、つきあいの始まり。

で、僕は長らく問答無用の痛快時代活劇を見たいと思っている。う~ん、といっても『暴れん坊将軍』とか『水戸黄門』じゃなくてさ。あれも痛快時代活劇じゃないのかと言われりゃ、確かにな。「本格」ってつければいいのかな。いや、何か言葉を足せば足すほど、元の意味が薄くなっていく気がする。超本格倒叙ミステリー、みたいな。とにかく『鞍馬天狗』は僕らの少年時代から問答無用のチャンバラヒーローなのだ。だからアラカンとか、雷蔵とか、主演は当代を代表する美男時代劇スターが演じている。

時代劇役者ではなかったものの、記憶に新しいところでは20年くらい前になるか、草刈正雄が演じた天狗もあった。草刈さんは阿部寛の前身みたいな人で、恐らく阿部さんと同じようなことで悩み、単なるモデル出身のハンサム役者の立場から何とか脱却しようとした時期もあったようだが、あの頃は時代が美男子には美男子以外の役を求めようとはしなかった。阿部さんが成功して草刈さんが失敗したのはそういう部分もあると思う。ともかく、真田幸村とか、沖田総司とか、颯爽とした時代劇のヒーローをよく演じたけれど、僕はあの人の演じたいかにもなそれらのキャラクターはみんな好きだった。当然、天狗のイメージにもよくあってたんじゃないかと思っている。

ま、それが最後の記憶になるくらい、ずいぶん長いこと連続時代劇としての『鞍馬天狗』は作られていないと思う。それを萬斎様主演でやるという。天狗こと倉田天膳は着流しのすらりと似合う素浪人で、しかも明朗快活、子どもに優しいお兄さんだ。はっきり言って、どう考えても萬斎様のイメージではない。あの人がやると、なんか皮肉っぽい浪人になりそうだし、杉作にも嫌味ばっかり言ってそうな気がする。ああいう人は京極堂とかやらせればいいんです。正直怖いもの見たさ。でも、天下のNHKのドラマなんだから、脚本家なりプロデューサーにはそれなりの狙いがあるんだろう。いままでの天狗像を大胆にアレンジし、天膳を勤王佐幕の争いを横目で眺めるニヒルな浪人にするとかさ。だから時には新撰組を助けたりしちゃうとか。それはそれで、面白いかも知れないな。

第一話は悲惨の一言。なによ、あの話? 実は僕は原作を読んでないので、倉田天膳が何者で、なぜ天狗になったのかという話は知らない。いままでのドラマはたいていそんなとこはすっ飛ばして、天狗の活躍をメインに見せてきたから。それでも天膳が実は没落した公家出身だったとは知らなかった。しかも少年時代から鞍馬の山中で天狗に剣術を習っていたとは。おまえは牛若丸か?

話自体も相当にぐだぐだだったが、それに輪を掛けて画面がぐだぐだ。公家出身だから本名小野なんとかって公家風の名前を持ってる天膳は、修行を終えて鞍馬の山から下りてきたら京は浪士を狩る新撰組が跋扈する修羅の巷となっていて、びっくりしちゃったりしてるんだけど、それは世間を知らなすぎだろっ。鞍馬と京、どんだけ離れてるっつーんだよ。山中でヘビしか喰ってなかったとでもいうのか?

なにより萬斎様は一応公家だからってことで、公達風の格好をしているが、公達とは貴族の子弟のことで、イメージとしてはせいぜい十代の青少年までの格好だ。仮にドラマ中の設定がそうだからということであっても、もう40を過ぎてるであろう萬斎様にあの格好は正直きつい。

さらに萬斎様はともかく、脇の役者がみんな安くて、たとえばいまさら石原良純にドラマ、しかも時代劇に出てくれなんて、いったい誰が頼んだんだ!?そして極めつけは颯爽と覆面を、ま、宗十郎頭巾というのだが、知ってる人にはおなじみのあれをだね、つけて悪人たちの前に現われるわけですよ。

で、でかい! なぜか頭巾が異様に大きく見える。闇の中から颯爽と現われる萬斎様のシルエットは、まるでエレキングかゼットン!? 誰だ、あの衣装作ったのは! もっとバランスってものを考えろよっ!

やっぱり天狗の頭巾って、かなり上背のある人で、なおかつそれなりに顔もでかい人でないと似合わないんだね。だからもう、そんな萬斎様が出てきてチャンバラシーンになったりすると、失笑するしかないわけですよ。殺陣はまだ目をつぶるとして、一応悪人たちの間をひらりひらりと動き回る、イカ頭。もうね、それだけで子どもが風呂敷頭にかぶってチャンバラごっこやってるようにしか見えない。もっと演出や工夫のしようというものがあるでしょ、やりようというものが! 絶対これは萬斎様のせいではないのだが、作ってる連中が舐めてると、こういうことにしかならない。NHKでは『清左衛門』のようなクォリティある時代劇は、もう二度と出てこないのだろうか。

ま、そんなこんなでほとんど倍速で見てしまいました。多分、二度と見ません。なにより天狗の正体が貴族なんて話は何にせよ初耳だったので、今度調べてみます。結論。すべて台無し()

『鹿男』
『野だめ』以降、壊れていく男を演じさせたら当代一の若手俳優になってしまった玉木くん主演のドラマだというのでチェック。正直、これからこの話がどんな展開を見せるのかまったくわからないが、まったく意味がつかめないながらも次の話にとりあえず期待をつながせるという部分は成功していると思う。というわけで、とりあえず第二話も見てみるつもり。内容に関してのコメントは、いまのところ不能。ただ、異様に仰々しいエンディングの颯爽たる鹿の群れは、何度見ても笑えそう。

『だいすき』
実は香里奈のファンです。と言っても実際はCMでの彼女くらいしか知らなくて、いままでもそこそこドラマに出ているらしいけど、たいてい僕のツボから外れていたのか、見たことはなかった。ただこのドラマは彼女が知的障害者で出産し、母親として子どもを育てるという話だとか。そういうチャレンジ精神のある内容は気になるので、一応どんなものかとエアチェック。

ま、彼女は頑張ってます。香里奈ファンならそれだけでよしとすべきかも。脇を固める役者さんも、少なくとも『鞍馬天狗』よりは高い。なのにドラマ全体を見通した時の、このチープ感は何だろう。昼の1時からどこかの愛の劇場あたりで放送しているというならわからないでもない。少なくとも夜の10時から放送するクォリティではないだろ、これは。

結局、海外ドラマを引き合いに出すしかないが、たとえばこういうテーマでアメリカがドラマなり映画なりを作ったとしたら、それはもう見事な感動作を作り上げるに違いない。なぜ感動するかといえば、やはりリアルに感じるからだろう。ちなみにドラマで人を感動させるリアリティとは、必ずしも真実とは限らない。人は真実に感動するのではなく、真実らしさに感動するのだ。

だからこのドラマも描かれている内容それ自体は、感動的な物語のはずなのに、画面から漂ってくるのは小ぎれいな嘘くささでしかない。なんかね、そろそろ日本のドラマ脚本家なりプロデューサーなりは、ここらで考え方を根本的に変えないと、日本の将来、ダメかも知れない。そんなことをこんなとこで、右翼のジジイみたいに嘆いていても仕方ないんだけどさ。

というわけで、これも今週限りの話になりそう。もっともこれから香里奈がドラマの中で、人の良さそうな福祉事務所の所長に犯されたり、素晴らしい理想を語るNPOの代表か何かに犯されたり、福祉作業所の仲間たちに輪姦されたりとかいう展開があるなら、また見始めるかもしれないが。

『篤姫』
さっき『鞍馬天狗』をけなしたが、あれはまだ期待の偏差値が多少なりとも高かったせいもある。それで言えば大河の『篤姫』。初めて聞いた時は多少は歴史通を自任するこの僕にして、誰だ、それ!? と思わず口走ったものだ。ま、天障院と聞いて、ああ、それは確かあの、という程度におぼろげな記憶はあったけど。とにかく、そんなあれだから期待のしようもない。一応、宮崎あおい、ちょっと好きだし。宮崎あおい蒼井優YOU…あ。終わってしまった。何やってたんだ、俺。そんなことはともかく、とりあえず1話だけ見とくか、てな感じで期待偏差値ゼロ。むしろマイナス。

ところがこの人は、一部の幕末ファンには人気が高いらしい。どうも本当にけっこう変わったところのある人だったようで、原作は読んでないけど、そう考えればあの宮崎あおい演じる篤姫の奔放ぶりもわからんでもない。でね、最初はなにしろまったく期待してないものだから、そのつもりで流し見していた。が、なんだか知らないが、いつの間にか徐々に引き込まれていった。脇を固める役者さんの確かさと、テンポのいい脚本、そのテンポに乗っかって、縦横無尽の活躍をしそうなあおい篤姫の予感。

2話目まで見て、僕はけっこうハマってきている。これ、面白いぞ。そう思ってしまえば、登場人物全員標準語喋ってたって別に構わない。思いっきり薩摩が舞台の場面なのに。それに普通、大河が幕末ものをやる時は、龍馬だの海舟だの新撰組だの、どれだけ奔放な男を主人公に持ってきたところで、基本は男臭く重いドラマになりがちだ。なんだかんだ言って連中がやってたことは、思想を賭けた殺し合いなんだから。その幕末ものでヒロインを主人公にする。いろんな意味で掟破りである。

はっきり言って大河、博打に出たな。そもそも大河で女を主人公にしたら、おんな太閤記を例外として、ほとんどコケてるんじゃなかったか。それもドアを開けて外へ出たら、いきなりバナナの皮を踏んづけて、思いっきりすってんころりん! という勢いで。だからこれ、視聴率的にはどうなるか、僕はわからない。正統な大河ドラマとは言えないかもしれないが、個人的には応援したいし、何とか頑張って欲しい。

そうか、この手があったか、と思ったのは、要するにこのドラマ、少女漫画なのだ。それも僕らが少年時代、つまり3~40年くらい前に全盛を迎えていた、天然が人を幸せにするというパターン。この手の作品を描かせたら、当時右に出る者がなかったのが、まだスポ根にいく前の少女漫画家、ちばてつや先生。僕は『篤姫』を見て真っ先に思い出したのが「ユキの太陽」や「あかねちゃん」であった。2話まで見て、ああどうやらこれは「ハイカラさんが通る」だなと思ったりもしたのだけれど。

ちなみに僕は、この天然キャラがそのけがれなき天衣無縫さで、頑なに心を閉ざしている人たちの心を解放し、幸せにしていくというパターンが、あらゆるドラマパターンの中で一番好きである。この場合、主人公は必ず女性、または少女であり、多くは貧困階層出身。多分昔は、男が天然ではバカにされる対象にしかならなかったのだろう。また、出自が貧困なのは、どんな貧しく辛い環境でも、こんな明るさを保ってきたというキャラ付けを強調したいためと、何不自由なく暮らす金持ちの家の少女が天然では、単なる嫌味にしかなかったからかもしれない。日本中がまだ貧しかった頃、あらゆる物語において金持ちは基本的に敵だった。

でもね、よく考えたらそれはやっぱりフィクションの世界だから成り立つ話であって、現実的に考えれば満ち足りた暮らしをしている人より、常に何か不自由な生活を強いられている人の方が、根性曲がる率は高いと思うぞ。その意味では篤姫は、何不自由なく育てられた無邪気なお姫様で、親の性格さえよければ、ああいう風に育っても別に不思議はないだろう。

今後の展開はあの篤姫が島津斉彬に気に入られて養女となり、島津藩主の娘という格で将軍家に嫁していく。明らかに政略結婚だし、しかも旦那はわりとすぐ死ぬし、それでもいずれ彼女は因習と規則に縛られた大奥を仕切っていくことになるわけだから、いまのうちに広げられるだけキャラを広げておけという段階だろうか。もしかすると江戸無血開城の陰にも、彼女の人知れぬ尽力があっ、なんて展開になるのかもしれない。てゆーか、きっとそうだろう。一番おいしそうなとこじゃん。

配役的には若き日の大久保利通を演じる原田泰三が意外といい。笑ってしまったのは(いや決して悪い意味じゃなく)、島津斉彬を高橋英樹が演じていることだ。昔、同じく西郷、大久保という薩摩の両雄を主人公にした『翔ぶが如く』を大河でやったときは、この人、斉彬の弟の久光役で、斉彬の役は加山雄三さんがやっていた。斉彬は実際かなりの名君で、彼が生きていれば明治維新ももう少し違った形になっただろうが、残念ながら若くして死ぬ。跡を継いだ久光は、斉彬ほど出来は良くない。斉彬に見出され、育てられたとも言える西郷は、久光のことを終生嫌っていたらしく、けっこう陰では「あの田舎もんが」みたいな意味のことをよく言っていたという。その嫌あな感じの久光を、堂々たる君主役の加山さんもうまかったが、高橋さんも実にうまく演じていた記憶がある。

だから僕は高橋さんが斉彬役で画面に出てきた時、思わずこう叫んだものだ。

「おっ。久光、出世したじゃん!」

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コメント

とりあえず今、観てるのは「薔薇」と「鹿」です。でも、どちらもすごく楽しみ、というより惰性。近々、観なくなってもおかしくない。
今一番の楽しみはテレビ東京系でやってる「CSI マイアミ」です。あれが自分の全生活の中で、一番のお楽しみというのも何か寂しいものがありますが。

ホレーショの方ですね。本家に加えてマイアミだのニューヨークだのいろいろ出てきて、もう全部おさえてたらきりないから、僕は全部見ないことに決めました。でもたまに見ると、やっぱり見せ方うまいんだよなあ。どうせなら「CSI TOKYO」作ってくれたらきっと見るんだけど()

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