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ダーク・ナイトを観てきました

■ 2008/09/15(月) 18:31:17 :曇り時々雨
昨夜、久々に映画を観てきた。世間では連休らしいということもあり、妻もレイトショーにつきあえるというので、どうかすると1年ぶりくらいの映画鑑賞復活。最後に見た映画が何だったかかももう覚えていない。絶対劇場で見るつもりだった3部作の完結編、たとえばボーンシリーズもX-menもスパイダーマンも結局全部WOWOW鑑賞()。小屋見にこだわる僕としては映画をテレビ画面で見たなんて、初体験の相手は南極Z号だと公言するに近い感覚がある。

というわけで、足かけ7年にわたった仕事もようやく一段落が眼前に迫りつつあるこの時期、めでたく僕の映画鑑賞も復活。その1作目に選んだのが『ダークナイト』。言わずと知れた新バットマンシリーズの2作目。

僕が映画として評価しているバットマンはティム・バートンが撮った2作だけで、3作目以降のシリーズはシュワルツネッガーやらトミー・リー・ジョーンズなど大物を配して、おもちゃ箱ひっくり返したような賑やかさはあったが、物語としての深みはまったくないという、ルパンやガンダムのファーストとそれ以降とよく似た位置関係になっていた。そういや『ダーティ・ハリー』に『ターミネーター』、『エイリアン』なんかも、2までは面白かったのに3作目でがくっと落ちた。『ロッキー』や『ランボー』でさえ2まではそこそこ見れたぞ。というわけで、ハリウッドのシリーズ物は2で寸止めにするのが正解。日本の作品に至っては、そもそも1作目からどうしようもないものを続編作ったりするので、理解不能。ちなみに『続戦国』も3巻以降は……これはまあノーコメント

というわけで正直、クリスチャン・ベールを主役に配して始まった前作『BATMAN BEGINS』も、どうせバートンのバットマンを超えるようなものではあるまいと思って、格段渡辺謙マニアでもない僕は食指も動かず、これは見逃したと言うより結局見に行こうという気が起きなかった。ところが、たまたま去年WOWOWで放映していたこの『BEGINS』を見て、ちょっと興味を引かれた。

これは両親を暴漢に殺されたブルース・ウェイン少年の物語から始まり、彼のあの体術の根拠にはどんな経験があり、次々繰り出されるバットアーマーはいつどんなシステムを手に入れたために可能になったかという、いわばバットマン誕生の前日譚をメインに置いた内容だったが、なんというかこの監督は、ちゃんと真面目にバットマンの物語をやり直そうとしてるんだな、という意味で好感を持ったのだ。むしろフリークス、つまり奇形や異形の者たちに対する偏愛をバットマンというキャラクターに仮託して映画を作ってしまったバートンよりも、バットマンのストーリーそのものに重きを置いているという意味では、多分に日本の漫画やアニメなどに通じるものがあるかもしれない。

だから『BEGINS』は日本人、それも僕ら世代の人間まではわかりやすいと思う。だって僕らはほら、魔球の出来る過程を楽しんだりできるじゃん。雪山で雪投げしてて、偶然、雪の球が地表の雪に紛れて見えなくなる瞬間に何か思いつくとか、川原で遊んでるときに川面を流れてきた落ち葉が突然水流に巻き込まれて川の中に沈んだ瞬間、木の葉落しを発想するとかその手の類が。ヒーロー物に限定しても、ゴクウもゴハンも敵と戦ってないときはとにかく修行してたし、レインボーマンだってインドの山奥でダイバダッタに稽古を付けてもらっていたのだ。突然思い出したがあれ、なんでダイバダッタなんだ? ダイバはキリスト教で言えばサタン的なポジションの人だぜ。ま、そんなことはともかく、多分、日本の漫画が読者に主人公の努力を見せなくなった頃から、日本人の劣化が始まっているのだと僕は個人的に思っているけど、それはまた別の話。

で、何の話だっけ。ああ『DARK KNIGHT』の話です。『BEGINS』ではまだゴッサムシティもバートン版と同じく、どこか無国籍未来都市の様相を残していたけど、『KNIGHT』ではもうほとんどシカゴかNYか、そんな辺りを感じさせる現代の都市に近い。バートンバットマンのように、都市の闇を牛耳る悪はフリークス集団などではなく、普通にマフィアだったりする。そんな街にニコルソンみたいなジョーカーが現われたら相当浮く、てゆーか警察より病院に通報されるかも知れないけど、今回この街に現われたジョーカーはだからかなりリアル。ちゃんとありえないキチガイではなく、もしかしたら本当にいそうなキチガイになっている。一言で言えば、恐い。

ニコルソンのようにジョーカー軍団などを率いているのではなく、こいつはピンの犯罪者。それも見た目のどうしようもない頭の悪さを擬装として、IQどんだけあんねんと言いたくなるような天才犯罪者である。こいつにバットマン始め、シティの治安当局、マフィアさえも振り回される。この、どこまでが誰の罠かというのも一つの見所で、さらに彼は人間そのものの本性に揺さぶりをかけるような手を幾つも使ってくる。このあたりのキャラ造形、あまりに気色悪くて3以降は見なくなった『SAW』の犯人と共通するかもしれない。

残念ながら、物語は内容的にちょっと流れの悪い個所があり、3つくらいの話を無理矢理詰め込んだような感じになっていて、特に後半いきなり登場することになるツーフェイスのエピソードなどは少し舌足らずというか唐突感が否めないが、それでもこの映画の魅力は削がれていない。僕は充分面白かった。ただし、暗い。それも今回はヒーロー物としては禁じ手とも言える救いようのない後味の悪さが残る。でも、それがバットマンの世界だと言ってしまえば、まさしく闇の騎士たるバットマンの物語に違いない。この救いのない世界で孤軍奮闘する彼の活躍は、この2によって方向性が決定されたともいえる。このスタッフで3があるなら、もちろん見に行く。

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