« 八日市ボウ,シッ党 | トップページ | 冬デザ変更 »

『うそうそ』残念!

先日放映されたフジテレビのスペシャル時代劇ドラマ。原作は畠中恵で、一作目の『しゃばけ』はそこそこ有名みたい。「みたい」というのは、僕はこの作家を知らなかったのだが、2~3年前、妻がどうもこの作品にはまったみたいで、知らないうちに我が家の本棚にこの人のシリーズが数冊増えていったことがあった。

面白いかと聞くと、面白いというので、試しにその一作目の『しゃばけ』を手にとって読んでみたが、どこが面白いのか正直言って僕にはさっぱりわからなかった。まあ、これは趣味の問題だろう。僕は明らかに手を抜いて作っているとか、客を舐めてるとしか思えない作品はコケにするけど、僕の琴線に触れない作品がダメな作品だというつもりは毛頭ない。で、いまの僕にはその面白さが分からなくても、本当に面白い作品ならどこかで突然、面白いと思うようになる時が来ないとも限らない。そういうことは、いままでにもちょくちょくある。妻はある意味、僕より採点の辛い女なので、その彼女が面白いと言ってるなら、やはりこれは彼女と僕の趣味の違いだと納得することにした。

で、去年。その『しゃばけ』をフジが実写ドラマ化するというので、正直それほど期待もせずにとりあえず録画しておいて後日見たら、この感想は前にも書いたかも知れないけれど、実によく出来た作品に仕上がっていた。配役もうるさかったのは宮迫くらいで、主要登場人物は概ね、イメージに近いキャスティングがなされており、原作を読んだ時にはぴくりとも動かなかった僕の琴線は、あのドラマによって大きく動かされ、クライマックスでは不覚にも涙腺さえ緩んだ。ああ、こういうことだったのか。そこで僕は初めて、妻が面白がった理由も分かった。ドラマの画面自体、いわゆる普通のビデオ撮影におけるのっぺり映像ではなく、ちょっとフィルム風のタッチを持った奴が使われており、やはり時代劇の画面は最低こうでなくてはね。放映直後は、DVDが出たら買おうかと半ば本気で思ったほどだ。

だからこの続編が今年の年末に放映されると聞いた時は、もう半年くらい前から楽しみに待っていた。僕が日本のテレビドラマの放映を楽しみにするなんて滅多にないことで、最近は年明けの『のだめ』くらいじゃなかったかな。『のだめ』のスペシャルは、期待に違わぬ力作だったが、さて『しゃばけ』の続編、『うそうそ』の方はどうか。

はっきり言って、結果は残念。最初の方こそ、いったんハマったドラマはお馴染みの登場人物が出てくるだけでも楽しいものだから、その辺りの採点大甘で、わくわくしながら見ていたものだが、主人公たちが今回は江戸を離れて箱根へ湯治に行くという展開になる頃から話が怪しくなってきた。

まず今回は話がややこしすぎる。ややこしいこと自体が悪いわけではないが、物語というのはどれだけややこしい話でも、後で共通の定規を当てるとすっきりと筋が通って見えるという展開にしないと物語として破綻してしまうのに、今回の物語で輻輳する話は、喩えて言えばそれぞれ使っている定規がばらばらで、それはつまりそれらの話の結びつけ方が極めて強引、でなければ御都合主義という展開にしか見えなくなる。

それから僕は、ずいぶん昔からもう、日本と韓国のドラマにしか通用しないような、独特のお約束的演出が嫌いである。例を挙げれば、どう見ても2~3メートルの距離からまともに顔を出しているのに、堂々と悪人たちの内緒話を聞ける不思議とか。でもこの演出を禁じたら、日本のサスペンスドラマ、多分9割以上、事件解決不可能になるだろうしな。前回はそれほど目立たなかったが、今回は話がつまらなかったせいか、そういう演出部分もやたら気になった。

何度も言うが、僕は人情話自体が嫌いなわけではない。だが、やはりこれも前回と比べてだが、前回が無理なく、さりげなく主人公の周りの人間関係を丁寧に描いて、ことさらお涙にもっていかなくとも、どこかしみじみと江戸期の人々の感情の濃密さを描いていい話に仕上げたと思えたのに、今回は無理矢理浪花節にしようとしたために、ドラマを見ている途中で何度も、おいおいそれはないだろと声に出して突っ込んでしまいたくなる場面が鼻につき、まったく一向、どこにもうるっとは来なかった。本当は泣けることを期待して見始めたんだが。

もともとちゃんとした小説だったのに、下手にドラマ化することで換骨奪胎され、原作のスピリットとは似ても似つかぬ作品にさせられる例はよくある。僕は演出もさることながら、話の内容がどうにも納得いかなかったので、見終わった後、妻に原作もこんな話だったのかと尋ねてみた。

「う~ん、でもだいたいこんな内容だったような気もする」と、同じ推理小説を何度も新鮮な気持ちで読める特殊能力を持つ妻は応える。いや、なんか話が陳腐すぎる。いやしくも大ヒットしている小説がこんな展開で売り物になるはずない。ちゃんと読みたいから、本を貸してくれ、と頼むと「もうないわよ」と答える。へ? ない……って、こないだまでおまえ、本棚に揃えてたじゃないか。「もう本棚の邪魔になるから全部図書館に寄付してきた」

そうであった。手に入れた本は、小学生の頃から一冊たりとも手放せない性格の僕に対して、彼女は本に対する執着心のまったくないタイプの女であったのだ。仕方がないので、今度図書館に行って借りてくることにする

« 八日市ボウ,シッ党 | トップページ | 冬デザ変更 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ