アカデミー賞の椿事
朝、6時前に目覚めてからもう眠らず、そのままWOWOWでアカデミー賞授賞式の生放送を見る。『おくりびと』が外国語映画賞にノミネートされていたため、果たして受賞するのかどうかが気になったからだ。
今年のアカデミー賞の司会はヒュー・ジャックマン。ちなみにATOK、「ひゅー・じゃっくまん」も一発でカタカナに変換するな。相変わらず「まけいん」は「負け院」のくせに。それはともかく、あの狼男が意外と多芸であることを知って驚く。さすがに向こうの役者は何でもこなす。数年前、司会をビリー・クリスタルがやった時は、オープニングに過去の名画をちりばめて、そこに合成ではめこまれたビリーが登場して笑いを誘う、サタデー・ナイト・ライブばりのオープニングフィルムが秀逸の出来だったけど、今回は会場のセットの中でヒューが歌い踊るといういかにもアナログなオープニング。もしかしたらこういうところに多少は世界不況のあおりが現われていたのかも知れない。
同時通訳が単にうるさいだけなので、開始して間もなくオリジナル音声のまま聞くことにしたが、午前10時前から始まったショー、じゃなくて今年の授賞式は、やはり例年に比べて全体的に少し地味な印象がした。何よりノミネート作品の紹介がわかりづらい。
いろいろ細かく場面をつなぎ合わせて凝ったといえば凝った編集をしているのだが、僕は例年、ノミネート作品の紹介ではわずか数十秒単位でも、ちらちらと現われるその映画の名場面や名台詞などを見ては、その作品に対する興味や想像をかきたてられたりしていたので、正直、今年の紹介方法は不満がある。ま、どうせ夜になれば完全字幕付再放送をやるだろうから、その時に見直せばもう少しみんな紹介しながら何を言っていたのかが分かるかも知れないが。
わりと早い段階で短編アニメ部門で日本人の監督が受賞し、一昔前に「ゲッツ!」とか叫んでいた人かと一瞬見紛ったその監督のたどたどしい受賞スピーチを聞いた後、気分は外国語映画賞の選考結果に向けて盛り上がる。とはいえ、実を言えば僕は予備知識がほとんどない。
去年、『おくりびと』が劇場でかかってた頃、何度も観に行きたいと思ったことは事実だが、何かしらいつもタイミングを逃してしまい、そうこうしてるうちに作品は劇場から姿を消した。それでも先週辺りからマイカルで一日2回だけだが再上映を始めたから、今度こそ観に行くつもりをしている。アカデミー賞に向けたバックアップか景気づけか、マイカルも意外と考えている。
ただねえ、この監督。僕は『陰陽師』とか見てボロクソだったからなあ。いいテーマといい役者とそれなりのCG技術力を駆使して、なんでいまさらこんな間延びした陳腐な話を延々と見せられるのだと、怒り心頭に発したこともあるし。やはり脚本によって映画は全然輝きを変えるのだろう。だからどれだけ評判が高くても、この目で実際に見てみるまでは何とも言えない部分は保留しておく。
それでもあの授賞式会場から、日本人スタッフが呼ばれて立ち上がった時は少なからず感動した。監督もまたたどたどしいスピーチで会場から微笑ましい笑いを受けたりしていたけれど、変に慣れた風情で堂々とスピーチするようなキャラでもない以上、あれはあれでよかったと思う。
いままで日本が国際的に評価されるような映画って、基本的に民俗映画がほとんどだったから、現代の日本を描いた作品が評価の対象になったということは、やはりそのドラマの中味そのものが評価されたことになる。これで少しはな、映画会社も売れてる役者を引っ張ってきて売れてる漫画を原作にこの程度の観客動員見込めまっせみたいな企画の立て方を考え直すきっかけになるといいのだが。
明日はきっとこのニュースでテレビも新聞も持ちきりになると思う。たとえ麻生が明日いきなり退陣することになったって、多分扱いはこっちの方が大きいことを期待する。だってこのところ日本の絡んだ国際的な話題って、例の国辱大臣を始めとするろくでもないニュースばっかりだったじゃない。政治は五流でも、文化は世界に比肩する実力を持っているのだと思えば、口の曲がった男の薄っぺらな演説よりは、遙かに国民に希望と期待を持たせてくれる話題だと思う。
ところでこのアカデミー賞、ま、これも例年やってるけど、昨年一年の間に亡くなった映画関係者を偲んで、メモリアルに人物紹介をする追悼コーナーがある。チャールトン・ヘストンとかシドニー・ポラックとかポール・ニューマンとか、ほとんどはもちろん米国の俳優や監督や技術者でハリウッドの隆盛に貢献した人たちだけれど、この中に突然市川崑の名前が出てきてびっくりした。紹介はそれぞれ数秒ずつのフィルムをつなぎ合わせ次々と列挙していくから、どうかしてると見逃したかも知れないのだが、そりゃ市川監督だって国際的な評価を受けていた監督には違いない。
ただね、突然市川監督の名前が出てきた以上にもっとびっくりしたのは、この名前がナレーターによって読み上げられている時、会場の紹介映像に流れてたのはどう見ても三国連太郎だったことだ。三国さんは生きてるよ! まして市川監督でもないし!() 2秒くらいで次の映像にいったからあまり目立たなかったかもしれないが、このことについて誰かアカデミー協会に突っ込む人は出てくるのだろうか。
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