« 観賞用映画とは | トップページ | また缶詰します »

ドラマのサブタイトルについて

午後、いつものように南蛮茶で仕事。ランチセットを待っている間にスポーツ新聞を読んでいて、ラテ欄をふいと見たとき、偶然目に飛び込んできたタイトルを見て思わず笑ってしまった。

その列は関西テレビなんだけど、関東で言えばフジテレビ。午後10時から『BOSS』という番組がある。僕は第1話の冒頭とラストの10分くらいだけ見た。実は意外と天海祐希がお気に入りだったりする。明るい大女キャラって僕は結構好きで、しかも彼女が出てくるまでわりとそういうパートを受け持っていた江角さんなどとは違い、彼女は美人だ。三枚目の出来る美人キャラは憧れる。

ただ、僕がいろんな役者を好きだの嫌いだの言う場合、たいていそういう動機を持つ直接のきっかけとなった作品とか演じた役が存在する。僕は去年『篤姫』を見て以来、すっかりあおいちゃんファンだが、それまで彼女の存在は気にも留めてなかったので、今年になってから慌てて『毒虫』とか『初恋』なども見てみたけど、やっぱりいまいちぴんとはこなかった。役者を活かすも殺すも結局脚本なんだな。どんなひどい台本の作品に出ていようが、きっちり自分の存在感だけは見せつける香川照之のような役者もいるが。

で、ひるがえって考えてみると天海さんの場合、僕は彼女をこれで気に入りましたっていう作品の覚えがない。なんだか弁護士もんだとかアラフォーでどうしたこうしたとか、彼女が出ているドラマはそれだけでちらっとは見るんだけど、たいていちらっと見ただけでその後一切見ないから、未だに彼女のあの役が良かったという記憶がない。じゃあなんで気に入ってんだろ。ま、それはもしかしたら忘れてるだけかもしれないので、思い出したらまた報告することにして。

『BOSS』も其の伝で、さっき書いたようにちらっと見た。タイトルだけ見たら缶コーヒーの宣伝ドラマみたいだが、一応刑事物らしい。そしたら何でも警察のはぐれ者ばかり集められた捜査班の班長か何かに天海祐希が任命され、どうやらそこで彼女がボスと呼ばれる存在になって犯罪捜査に立ち向かうという物語になるらしい。えーと僕は、この新しい捜査室の部屋にくせ者たちが荷物を持って集まってくる辺りでもうチャンネルを変えた。

いまのテレビドラマは、何かをもっともらしく見せようという努力をもう最初から放棄しているか、一応もっともらしく見せようとして失敗してるかどちらかしかない。もっともらしく見せようとしてるドラマなら、一応失敗する辺りまでは見る。場合によっては多少の失敗には目をつぶって見続けることもある。このドラマは前者だ。正直これならキャラそれぞれの感情として『踊る捜査線』の方が遙かにリアルだった。少なくとも刑事らしく見える人間が一人もいない刑事ドラマが成立するなんて、この国のテレビドラマ以外に僕は知らない。

もっともらしく見せる気がなくても、プロットそのものが面白いとか、その世界観が面白いとか、あるいは演じて見せている役者が面白いとか、そういうことで成功する作品だってあるから否定はしない。フジ系列の刑事ドラマで言えば『踊る捜査線』とか『古畑任三郎』がそうだった。でも『BOSS』は食いつけなかったな。他に見るものもなくなって、後半はどんな展開になっているのかとまたチャンネルを戻したら、武田鉄矢が天海祐希の取り調べを受けていた。時限爆弾か何かを仕掛けた犯人が武田で、爆発予定時刻までにそれを仕掛けた場所を探り出さなければならないらしい。見た瞬間にまさかこんなオチじゃないよなと、いままで百回くらいこの手のパターンで使われているオチを予想したら、何のひねりもなくその通りだった。もう絶対見ない。

そんな僕がなぜ今日のラテ欄を見て笑ってしまったか。最近関西テレビでは不況の影響か、午後からドラマの再放送が増えている。午後3時から『セレブと貧乏太郎』。また横道に話が逸れるけど、このタイトルもどうよ。とても平成時代に作られたドラマとは思えないレトロ感覚というか、もしかして狙いだったのか? ちょっと前に別の局でやってた、もう正確なタイトルも覚えてないけどロト6で何億か当てた男、とかいうタイトルとほとんど双璧をなす直球勝負。タイトルを見ただけで萎えるタイトルベスト10でほとんど1、2位を争いそうな好敵手。狙い通り、どちらも一度も見たことないけど。あ、でも笑ったのはこれじゃない。

午後4時から『シバトラ』。これも小池徹平が刑事だか警官だかやってるという話だけは後に聞いて知ってるけど、最初にタイトルだけ見れば何だか分からない。僕はこれが新番組で始まった頃、農業物かガーデニング物だと連想したくらいだ。エコブームだし。いや、そうじゃなくてこれの今日のサブタイトルで「裏切り、僕は絶対に許さない!」という文字が目に入った。が、少し視線を下に移して午後10時から缶コーヒーの『BOSS』。これのサブタイトルが「女の敵は絶対に許さない!」だったのである。

ま、こんな似たようなタイトルが並んだのはたまたま偶然だけどさ。しかも一方は再放送だし。同じシーズンの新番組で『BOSS』という刑事物と別の局で『ハンチョウ』という刑事物が始まることのシンクロニシティに比べればまだましなような気もするが。いっそテレビ東京辺りで『デカチョウ!』とかNHKでは『オヤっさん』とかそんなタイトルでみんな同期に刑事物始めたらどうか。いや、そんなことより僕が今日言いたいのは。

時期こそ違え同じ局の同じ刑事物というジャンルで、もちろん内容も展開も全く違うはずだとは思うけれど、このタイトル一つの付け方を見てももう陳腐感ありあり、つまり何のひねりもない手垢の付いた言葉をサブタイトルにして平然としていられる製作サイドの神経そのものを問うているのだが、結果的には同じ日にラテ欄に同局の番組なのにこんなタイトルが並んでしまったりする状況を目にしただけで、これで魅力ある内容のドラマが本気で作られていると僕なぞにはとても思えない。

まあ、どちらも見てないドラマだから別にいいんだけど。でもサブタイトルだって結構大事な作品の顔のはずだ。サブタイ決めてからシナリオを書く場合と、書き上げてからサブタイ考える場合と二つあるけど、どちらにもそのシナリオの内容に則った作者の思い入れとか込めたメッセージとか、そういうものが毎回濃淡の差はあってもにじみ出ているのがサブタイトルだ。上記2作品のサブタイトルにはそういう製作側の体温がまったく感じられず、明らかに流して付けたタイトルなんじゃないかと思われる。少なくとも僕はそう感じた。

もしかすると、いやあ本編は面白かったから内容を見て批判しろと言う人もいるかも知れないが、内容を見る気も起きないという話を今回はしているのだから仕方がない。強いて言うなら本編タイトルを見ただけで見る気の失せるセレブと何とか太郎だとかロト6でどうした男とかに比べれば、まだ数ミリましとは言える。

« 観賞用映画とは | トップページ | また缶詰します »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ