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眠気が渋みに替わるお年頃(^^ゞ

人や自然の映像を綺麗に撮って、その心地よさに映画館へ行くとたいてい途中で寝てしまう作品だったという印象しかないジェームズ・アイボリーの『ローズランド』をWOWOWで放映していたので、飯を食いながら鑑賞。製作年は1977年になってる。もう30年以上も前なんだ。僕がまだ大学生だった頃じゃないか。

作品はニューヨークのダンスホール「ローズランド」を舞台に、ここへ踊りに来る老若男女のそれぞれの人生の断片を描いた3話オムニバスもの。オムニバスとは言っても、ここで働くレッスンコーチの女性を狂言回しに、物語自体はシームレスに続いている。オムニバスってこの頃まではけっこうよく目にした形式だけれど、最近はあまり印象に残るものを見た記憶がない。

オムニバス映画で僕が真っ先に思い出す名前は『トワイライト・ゾーン』だけど、あれはまあ、話がそれぞれ派手だから覚えているだけで、本当はヨーロッパとか北欧系の監督の映画なんかでも、いまだにちょくちょく見かける形式ではあるが、そういうのはだいたい覚えてないです。オムニバスの肝って結局短編の切れ味だから、しみじみした物語を3つか4つ並べられても疲れるだけ、というのが長らく僕の持論であった。

だからいまでも鮮烈に記憶に焼き付いてるのは『世にも怪奇な物語』。小学校か中学の頃、テレビ放映で何度か見てるんだけど、確かポーの原作を下敷きに、ジェーン・フォンダとかアラン・ドロンとか、あの頃のトップスターを配して製作された。もしかしていま見るとたいしたことではなかったのかもしれないが、子どもの頃の僕はあれの第3話だったか、夜中に真っ白な顔をした少女がハイウェイの真ん中でまりつきをしているという、そのまりが実は最後は主人公の首に替わるんだけど、あのシーンが夢に出てきそうなほど恐かった印象がある。

ま、『ローズランド』はタイトルはそれっぽいものの、もちろんホラーでもSFでもなくて、どちらかといえば「ニューヨーカー短編集」みたいな味わいのある話が並んでいる。しかも渋い。男女の関係に関わる話ばかりではあるが、登場人物に若者はほとんど出てこない。強いて言えば2話目のジゴロみたいなキャラを演じるクリストファー・ウォーケンが若いけれど、後はもう棺桶に半分足を突っ込んだような爺様婆様の話。大学生の頃の僕なら、やっぱり寝てたね。

いまはなんと、この物語で描かれる人生の晩年を迎えた男女の寂寥感溢れる物語が、なんとなくわかるようになってきてしまった。オムニバスに切れ味だけを求めていた僕にしてみれば、ものすごいこれは心境の変化ということになるのだが。もちろん人に勧めたいというほどの話ではないし、つまり激しく感動するとか、日本の人生断片風短編小説なんかにある、ちょっといい話的な要素なんてものもほとんどない。

ただ沁み入る。この物語の登場人物は誰も、戦ってるわけでもないし、乗り越えようとあがいてるわけでもない。強いて言うなら受入れるだけである。自分の老いを。あるいはこれまでどうにもならなかったし、これからも恐らくどうにもならないであろう己の人生を。

ああ、たまにはちゃんとこういう話を見なきゃだめだよな、と職業感覚に目覚めてしまう一遍なのだが、これがどんな感じでしみじみしているのかは、なみだ坂なんとかなんて漫画を読んでいると、そのうち何かその断片が出てきたりするかもしれない

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