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彼女の最後の『接吻』の意味は?

10月9日 WOWOWで録画していたものを鑑賞

『接吻』は小池栄子主演。冒頭、豊川悦司が住宅街をふらついて、たまたま玄関の鍵が掛けられてなかった家に入り込み、一家三人を次々に惨殺してしまう事件の描写がちょっと恐い。いや、殺人場面はまったく出てこないのだが、トヨエツがその家に入った後、カメラの構図はその家の玄関に固定され、夕方に小学生の娘、夜にサラリーマン風の父親がそのドアに入ったきり、画面はただ静かな玄関が延々撮されているだけという表現。妻には家に入ったら絶対に玄関の鍵をかけ忘れないよう念を押しとかねば。

この映画ではトヨエツが殺人に至った動機だとか、裁判の経過がどうしたなんて話は一切語られない。ただ、死刑を求刑されたトヨエツをテレビで見た派遣OLか何かの小池栄子が、同じ社会からの疎外感を持つものとして彼に激しく感応してしまい、差し入れや文通を通じて接近を図っていく過程が描かれる。

ついには死刑の確定したトヨエツに対し、死刑囚には身内以外の面会ができなくなるという理由から、彼と結婚することを決意するのだが、彼らの仲立ち役となる、一応人権派の弁護士らしい仲村トオルは、徐々に小池栄子に対する好意の感情が芽生えてくることで、苦悩を深めていく。最後にちょっとしたクライマックスがあるけれど、それまではまあ最近の日本映画によくある、極めて地味で淡々とした話。

はっきり言ってよくわからなかったっす。別段、登場人物の誰にも感情移入はできないし。ま、登場人物に感情移入できるかどうかを僕は作品の絶対的な評価基準にはしていないので、まったくつまらなかったと言ってるわけではないのだが、登場人物の感情を理解していないとここのこの行動の意味は多分わからないのだろうなという部分が何カ所かあって、特にラストの「接吻」の意味は、え? どうして? と思ってしまった。まあここもいろいろ解釈の分かれるところなんだろうな。これ、原作はあるのだろうか。

ただ、テレビの『大奥』でのメイクも光っていたが、僕は以前から小池栄子という女優の顔立ちがちょっと気になっていて、この映画でも相当の難役に違いないヒロインを、それなりの存在感で演じていた。この人はもっと凄いドラマに出て、凄い役に挑戦してみてほしい。もしかすると太地喜和子が死んで以来、空席になっている位置に、この人あたりがはまる可能性もあるのではないかと密かに期待しているのだが。

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