せんとちひろのつのかくし
今日は天皇誕生日。ということで世間的には休日らしい。
僕ら昭和の子にとっては天皇誕生日と言えば、楽しい黄金週間の始まりを告げる鐘の音のように心躍る響きがあったが、いまの天誕は少なくとも社会人一般には不評極まりない。知り合いの編集の一人なぞは、年末のややこしい日に天皇が生まれたものだからただでさえ忙しい時期の仕事がさらにめんどくさくなって仕方ないなどと不敬極まりない愚痴をこぼしておったが、考えてみれば翌々日はクリスマスなわけで、この異教の神の降誕を祝うほどには日本人は天皇の誕生日に関して無頓着であるように見えるのは、いったい日本人としてはどういうわけかと思う。
もっともクリスマスだってこの国の場合、もともとはこの西洋の旗日にかこつけてどっかのケーキ屋が始めたキャンペーンがまんまとはまったのをきっかけに、様々な商売がクリスマスに乗っかるようになり、高度経済成長な気分とも相俟って、いつのまにか年末特需の一つのイベントにまでなり、さらにバブルの頃には、若き男女が身の丈に合わぬディナーやホテルを予約して、日本全国津々浦々から恥垢の匂いが天に立ち上らんばかりの勢いでまぐわう口実になるという特異な風俗をも産み出すこととなった。
まあ、それでもこの結果、日本人のほぼ誰もがクリスマスの存在を認知しているし、それどころか子どもの頃には、夜中に真っ赤な衣装に身を固めて人んちの屋根から室内に侵入するという不審極まりない白髭の大男の存在を、信じているのが無垢なる心と勘違いされたりする。日本人ならば大雪の降る夜中に、米俵を担いで家を訪ねてくる地蔵の団体の存在を信じた方がまだましではないかと思うのだが。
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