産まれた子どもがベトナム人なら……!?
■ 2010/08/01(日) 14:43:19 :曇り
10時頃目を覚まし、朝食代わりに妻の作ったそうめんを食べた後、昼から自転車で近江八幡コメダコーヒーへ仕事に出かける。
コメダコーヒーは最近出来たファミレス並みの規模を持つコーヒーハウスだが、聞いた話によれば本社は名古屋かどっか、とにかく愛知の方らしい。だからかどうか、コーヒー一杯頼むたびに必ずピーナッツの小袋がおまけでついてくる。なにしろ愛知と言えばモーニングサービス発祥の地。なるほど気持ちを物の形で表わすことに関して、あの土地柄にはてらいがない。
何か人にサービスしたいとか、自分のサービス精神をアピールしたいと思った場合、照れてはダメである。とは、僕が大人になって学んだ真理の一つ。昔、世話になっていた出版社の社長は回天の生き残りで、社員四、五人で始めた会社を日本でトップクラスの大エロ本出版社に育て上げた立志伝中の人物だが、編集会議の席などでこの人がよく言っていた。企画というのは中途半端に立ててはダメだ、やるというなら他人から顰蹙を買うくらいのところまで徹底的にやらねば読者にはアピールしない、と。
この教えを忠実に守っていれば僕にもいまごろヒット作の一つや二つ残せたかもしれないが、基本的に根が照れ性のせいか、どうにもそういう割り切り方をする作品はいまに書けない。この中途半端さがネックなんだろうなと自分ではわかっているが、作品がある程度作家の性格を反映したものにならざるを得ないと考えれば、僕にはやはりその方向は無理であろう。
昨夜、夜中にWOWOWで『ほぼ300(スリーハンドレッド)』という映画をやっていた。一瞬、ん? 『300(スリーハンドレッド)』の誤植!? かと思ったが目を擦ってよく見ればやはり『ほぼ300』で間違いない。なんと『300』のパロディ映画で、はねトビで言うところの「ほぼ、嵐」とほぼ似た扱いか。内容的にもほぼ、どっこいどっこい。
で、タイトルにしたのはこの映画のほぼ冒頭に出てくるナレーション。オリジナル『300』では、スパルタ人に男の赤ん坊が産まれた場合、体のどこにも欠陥がないか入念に調べて、少しでも瑕疵が見つかった赤ん坊はそのまま崖の下に捨てられるというナレーションの解説とともにその情景を表わした場面が描かれるのだが、この映画ではその場面に続いて、また赤ん坊がアップになり、これが眼が細くて口の尖ったいかにも東洋人系の赤ん坊なのだが、すると「産まれた赤ん坊がベトナム人なら、ブラピとアンジェリーナ・ジョリーにやればいい」というナレーションが入るのだ。ほら、人によってはもう、ひくしかないでしょ?
ストーリー的にはほぼ13人くらいのスパルタ兵士が、ほぼ20人くらいのペルシア軍と戦うという、数の規模を著しく落とした他はオリジナルの展開をほぼ、忠実に追っているのもおかしいのだが、かなり無意味にオリジナルとほぼ同じ構図を作って場面を再現してるのもひきつれる笑いを呼ぶ。ただし、随所に挿入されるギャグやら楽屋落ちやら唐突な登場人物は、恐らくいまのアメリカの人気テレビ番組やら芸能ニュースやら文化人やら政治家やらを戯画化したと思われるものの、僕のようにそんなものに詳しくない人間にはほとんどちんぷんかんぷん。映画のパロディ部分ならかろうじてそこそこわかる。とはいえ疲れていたし、眠かったので最後まで見きれずに寝てしまう。ま、これは別に惜しいとも思わなかったが。
実は僕は昔からこの手のおバカ映画は結構大好物なのである。20代の頃はメル・ブルックスのファンだったし、フランスのルイ・ド・フュネスなんかも大好きだった。彼らの映画はまさしくてらいなくバカにまっしぐらで、顰蹙を買うことも恐れない過剰なサービス精神に溢れている。だからネタによっては本当にくだらないギャグが連発されることもあるのだが、腹の底からくっだらねぇ~と言いながら笑える快感というのはハマってみれば癖になる。
最近、駅前でカウンターバーを始めたSくんは『ヤング・フランケンシュタイン』は僕のバイブルです、などと真顔で言う男だが、僕は全編ヒッチコック映画のパロディで埋め尽くした『メル・ブルックスのサイコ』が一押し。『STAR WARS』のパロディである『スペース・ボール』の下品さも捨てがたいが、ヒッチコックを知ってる人間相手なら、メル版サイコのエピソードのどれを話しても、必ずすべらない話になる。ただし最近のキャバのお姉ちゃんたちは、オリジナルのヒッチコック映画を知らない人間が増えてきたので、あまりこの手はきかなくなってきた。
思い出しついでに話を広げれば、1970年代あたりはパニック映画大流行の時代で、中でも人気の定番作品に大空港とかエアポートなんてタイトルをつけたシリーズがあった。毎回、飛んでいる飛行機にトラブルが起きて、それをパイロットやスッチーやら、地上ではジョージ・C・ケネディみたいな空港管制官たちが寄ってたかって力を合わせながら危機を回避するという、まあ、僕のような飛行機嫌いの人間にとってはますます飛行機に乗りたくなくなるような映画ではあったのだが、それでも幸い僕が海外に行ったときは、機長が突然心臓発作も起こさなかったし、機内にテロリストも現われなかったし、悪天候で雷に打たれて計器類が機能停止するようなこともなくてよかった。
そんな空港パニック映画のお約束を全部盛り込んでお笑いにしたのが『フライング・ハイ』。あの作品は強烈すぎるオープニングの映像とともに、しっかりと記憶に焼き込まれている。飛行機なんて全編ただのミニチュアで、確か『ケンタッキー・フライド・ムービー』のスタッフが関わっていたことでもわかるように、もう製作側の気の抜けた低予算映画の心意気がびんびん伝わってくるような作りだったが、意外なことにこれが大ヒットして続編まで作られた。
もっともパロディ映画というのはあくまで本歌取である。つまり旬な元ネタがあって初めて成立するジャンルだから、一発勝負のキワ物感覚こそ命。極端に言えば作ってる連中が、公開後にいつでも逃げ出せる準備をしてるような捨て身の作品が本来は最も勢いがあるわけで、いくらヒットしたからといって続編を作るのは、エロ本で成功した出版社が次に梅原猛か小松左京の名前を監修に引っ張ってきて文化的な本を出したがるようなもの、すなわちたいてい失敗すると相場が決まっている。実際、この続編は一作目に遙かに及ばなかった。そういや『ブルース・プラザーズ』も二作目は作るべきではなかったな。
確かこの『フライング・ハイ』なんかと同時代の頃、だからもう30年くらい前、テレビで深夜放映していた映画を見て気に入り、後にレンタルでビデオを借りてまた見直した作品があった。『病院狂時代』というのだが、これは多分知らない人の方が多いだろうな。内容はこれもアメリカのテレビで一ジャンルを築いてる病院ドラマのパロディがメインであるものの、他にも映画のパロディがてんこ盛りでまあくだらないことこのうえない。好き嫌いはあると思うが、僕はけっこうツボにはまった。
ちなみに監督は後に『プリティ・ウーマン』で売れっ子になるゲイリー・マーシャルのなんと劇場映画デビュー作、ヒロインのセックス中毒のインターンにはショーン・ヤングである。といってぴんとこなければ『ブレード・ランナー』のレイチェルといえばわかるだろうか。ほぼ同じ時期に、ずいぶん振れ幅の大きい役をこなしたものだ。
僕が最近、といっても2、3年前だが、お気に入りになったパロディ映画は『ギャラクシー・クエスト』。あまり気に入ったのでDVDまで買ってしまった。これは拡大公開された作品ではないはずだが、口コミでかなり評判は広まっていた。なにしろ配役が豪華。主演の名前は忘れちゃったが、脇にシガニー・ウィーバーやらアラン・リックマン、それに『名探偵モンク』のあの人。この役者さんは確か『マーシャル・ロー』では民族的に微妙な立場にあるアラブ系の刑事を演じて、シリアスな演技力があることも見せつけるが、やっぱりモンクと同様、とぼけた味の出せる役が独壇場である。
で、これは何のパロディかと言えば誰が見ても間違いなく『スター・トレック』。それもあのシリーズがTV放映を終えて何十年も経ち、80年代に映画でリメイクされて再びブレイクする以前の状態を痛烈にパロってる。パロディ映画と言えば低予算がお約束だが、この映画はキャストを見てもわかる通り、パネエ作り方をしている。
内容のバカバカしさを除けば画面はいっぱしの特撮大作。なにしろ製作にはドリームワークスが噛んでいる。これだけでも日本映画が逆立ちしたって真似できないレベル。その上で名優たちが生き生きとあほな物語の芝居を演じている。これで楽しくないわけがない。僕など不覚にもクライマックスで思わずじーんとしてしまった。だって、ちょっとイイ話なんだもん。バカなのに。こんな作品でも脚本はちゃんと作ってあるから、1分程度で泣けるという触れ込みのバカ話とは所詮出来が違う。
考えてみれば最近はなかなかこの手の映画を目にする機会が減ってきた。いや、海外では相変わらず作られてるのかもしれないが、こんなに世間がしんねりむっつりしてるときこそ、腹の底から笑える映画を見てみたいのに。もしかしていまの日本は笑ってる場合じゃないだろとでもいう誰も口にしない空気のようなものが流れていて、そのせいで笑える映画が流通しなくなっているなんてのは考え過ぎか。そういや世間におバカ映画が溢れていた頃は、確かにバブルの真っ盛りだったが。
日曜つながりで思い出したが、これは先週のこと。一応医療関係のドラマはなるべくチェックするようにしている僕は、日曜夜、『新参者』の後番組でやってるヒガシ主演の新番組、なんかタイトルはもう忘れたけど踊るドクターみたいな、タイトル一寸見、『踊る捜査線』のノリかパクリかと思えるようなあれを視聴。
はっきり言って『踊る捜査線』の病院版なら僕はまだアリだと思ってる。てゆか、いずれやりたい。だからどんなものかと気になってちらっと見てみたら、冒頭からヒガシが踊ってた。タイトルそのまんま。他の登場人物もばらばらと出ては来るのだが、5分ほど見ていてもこれが何のドラマなのかさっぱりわからない。てっきり医療ドラマが始まるのかと勘違いしていた僕は、ただのコントを見て1時間も時間を潰したくないので、即座にチャンネルを変え、頭の中の二度と見ないリストにタイトルだけ記憶。
確かにこの手の番組も腹の底からくっだらねえぇ~とは思わせてくれるが、笑えない。それはただのくだらねえ番組というしかない。残念。
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コメント
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残暑見舞い申し上げます。
先生におかれましてはこの暑い夏をご健康にお過ごしください。
投稿: 位置や | 2010年8月19日 (木) 22時07分
『ほぼ300 (スリーハンドレッド)』でっか。私もたまたま途中から見て、最後まで見てしまいました。TVで昔放映されていたSFシリーズ「アンドロメダ」の主役(ディラン・ハント艦長)を演じていたケヴィン・ソーボが、この映画でも脇役の隊長をやっていました。きっとなにかやってくれるぞと思っているうちにあんなんなっちゃったけど。
生まれた女の子がベトナム人なら、アイドリング!に入隊させるのだが。
投稿: いわさきやすし | 2010年9月16日 (木) 22時02分
>位置やさん
残暑コメントありがとうございます&すみません。しばらく更新してなかったので位置やさんのコメントに気づかず、お返事しようと思ったらもう、こんなな季節になってしまっておりました
>いわさきせんせ。
お久しぶりです。てゆーか、選挙前に葉書いただいてたので、あっ、これはメールででも何か残暑見舞いとか何かにかこつけて連絡しなければっと思っているうちに、もう、こんなな季節になってしまっておりました
いまかかってる小説の仕事さえ片付けば、今年こそこの十年くらい不義理している人と順番に酒など飲んで回るつもりをしているのですが……まず、仕事が片付くかどうかが最大の問題だったりしてね()
投稿: ujikun | 2010年9月21日 (火) 00時08分