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二度と見たくないドラマ

昨夜は数日前に録画しておいたNHKハイビジョンでやっていたドラマ『妻を看取る日』を妻と一緒に見る。このドラマ自体は昨年の暮れに一度放映したものの再放送だったらしい。

 

僕は基本的に難病ドラマみたいなのは苦手で、さらに片っぽが難病で死ぬ御涙頂戴な話なんてケッと唾を吐きたくなるほど毛嫌いしているのだが、おまえもそんな話をよくやるだろうと言われると、ぐうの音も出ないのでその唾は結局自分の頭の上に落ちてくることになっている。まあ、嫌うというより己の涙腺の弱さを認識するのが嫌なのかもしれない。

 

『妻を看取る日』は天皇の癌手術を行なったことでも有名ながんセンターの総長まで務めたお医者さんが、奥さんを癌で亡くされた実話を元にしたドラマで、僕がこれに興味を持ったのは、原作にもなったこのお医者さんの手記に、実際に奥さんが亡くなるまでの様子が、看護記録として克明に記されていたからだ。
 

期待通り(?)ドラマでは奥さんを自宅に引き取ってから、数日後に亡くなるまでの様子が、一日ごとに尿量の変化や点滴量、バイタルの数値など羅列しながらけっこうリアルに描かれていた。何より奥さん役の市毛良枝熱演。普段は円空仏みたいな顔をしている國村隼さんの号泣シーンには、思わずこちらもテレビの前で号泣。妻はと見れば、隣でこたつに入ったまま寝ていた()

 

実話のドラマ化、というよりは再現ドラマに近い話だから、奥さんが死ぬ以外は格別ドラマチックな展開があるわけでもないが、40年連れ添ったおしどり夫婦で子どももいない関係となれば、何となく僕も他人事ではない、というよりつい、自分たちの環境に移し替えながら考えてしまう。だから奥さんの希望を聞いて彼女を自宅に連れ帰り、二人だけで最後の日々を過ごしたあのお医者さんの日常は、僕なら絶対に耐えられない。市毛さんと國村さんの芝居を見ながら、僕も市毛さんと一緒に下顎呼吸をしている始末である。

 

このドラマは実は奥さんが死ぬまでが前半で、後半は残された旦那がいかにその喪失を乗り越えていくかという部分が描かれるのだが、民放などでよくありがちなタイプのがんドラと違い、必要以上に感動を盛り上げようとして過剰なセリフや芝居を盛り込んだりせず、ドラマの展開自体は無駄な部分もなく淡々と進み、その抑えた芝居の部分で主演の二人は実にグッジョブを見せてくれた。

 

どれだけ若くて可愛い花嫁が死のうとぴくりともしなかった僕の涙腺は、このドラマの淡々としたリアリティにダム決壊。旦那が立ち直っていく過程でも、嘘くさい仲間の励ましとか奥さんが残したメッセージに突然気づくとかそんなドラマ的な演出にはいっさい頼らず、ただ泣き暮らして日にちが経っていくうちに、いつの間にか立ち直っていたという展開も、さもありなんと納得させられる。ラストシーンも案外さわやかで、きれいにまとまっていた。まあ、あまりにつらすぎて、二度と見たいとは思わないドラマだが。
 

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