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日曜深夜の妄想

今夜はTBS系列で『仁』をやっているはずだが、あいにく僕は日曜のこんな時間だというのにまだ『なみだ坂』があがっていないので、仕方なく仕事場でパソコンの前に張り付いている。

 

もっとも『仁』は毎週録画をセットしてあるので、時間のある時にゆっくり見ればいいのだが、問題は『なみだ坂』の原稿が近頃、以前にも増して遅れ気味ということ。まあ、はっきり言えばこれにはこの作品を続けていくことへの僕個人のモチベーションの甚だしい低下という問題もあるのだが、このことはあんまりこんなところで言い過ぎると、多分僕がいままでバカにしてきたろくでもない原作者の仲間入りをすることにもなりかねないので、そういう話はいずれナマ俺とナマ飲みした奴の誰かにぶちまけるまでとっておく。

 

というわけで、今日したい話は『仁』の話題を出したついでに、もう一言。
 

僕は前期の『仁』を絶賛していた通り、とにかくこの続編は待ち望んでいたし、今期ドラマの全体を見渡しても、いやもう見渡す以前に今期の本命は『仁』で間違いないと踏んでいた。ところが蓋を開けてみると、この『仁』に無謀にも真正面からフジがドラマをぶつけてきていて驚いた。『マルモの掟』というドラマである。

 

プロット見た時点では、なんとあざといことをと、思わず笑ってしまった。なにしろ出てくるのが子どもと犬。企画会議で偉いのがなりふり構わなくていいからとにかく数字の取れるドラマ企画出せと言ったら、出てきたのが子どもと犬。そんなところではないかと思うが、そこまでして『仁』に勝ちたいか!? フジテレビ。そういや今期のフジは、そういう意味ではあざとさの目立つ企画が多い気がする。

 

ま、それで見たわけですな。見たんかい(by 髭男爵)。『仁』はしっかり録画してあるし、なにしろ子役がマナちゃんだ。僕は昔からマナという名前には弱い。ほれ、『ふたりっこ』の……なんつったっけ? 名字忘れたけどマナカナとかいうの。あの頃から実は僕は隠れマナファンである。どっちがマナかカナか区別はつかんが。

 

で、正直、1話目はそこそこ面白かった。要するに平成版『パパと呼ばないで』をやりたいわけだね、ということは知ってる人間ならすぐぴんとくるが、それに喋る犬をからませるという、とんでもな発想はありだと思った。だってそれは、喋る犬などあり得ないという前提なら、主要キャラたちの心の声の代弁者という役割を負わせられる。ま、1話や2話を見た時点で、まだ脚本家がこの喋る犬のオチをどうつけるつもりか、という予想は立てられないけれど。

 

だいたいその犬も含めて、今回の主人公たちには『パパと呼ばないで』にはあった血縁という関係もない。なるほど、これはすべて、現代の社会からある部分、捨てられた者たちの肩寄せ合う物語になるのかと、案外期待は膨らんだ。そんな話を40分強の間、笑って泣かせて怒濤の如き展開で見せていくことができるなら、『仁』とてうかうかはしてられないんじゃないか。そんな風に思って、それから毎週見ることにしようと決めたのだ。

 

えぇ、その意気込みはもろくも先週あたりでくじけてしまいました。だから今夜、仕事の手を止めてテレビを見にリビングにも降りていってない。かわりに仕事の手を止めてこんなもの書いたりしてるけど。なぜか。簡単に言えば脚本がヘタレ過ぎた。そうなのだ、いま各テレビ局のプライムに放送するドラマで、まともな脚本書ける作家の作品をほとんど見た覚えがないってことを忘れていた。特にフジテレビとかはな。

 

繰り返しになるかもしれないけど、ドラマシナリオの役割とは基本的には説得力である。と、僕は思っている。つまり、第一義には主人公の行動を視聴者に納得させること。その手段がシナリオには描かれていなければならない。よくシナリオは設計図にもたとえられるが、あるキャラを作り上げる時に、矛盾が生じないよう、こいつはこんな場合に何をして、何をしないか、そういうことを頭の中で精密にバランスを取りながら、そのキャラの行動表を作っていくところはまさに設計そのものだろう。

 

漫画の原作でももちろん同じように考えるのだが、漫画ではドラマのように役者さんが芝居をしてくれるわけではないので、基本的に一番神経を使うのはセリフである。意外と小説の中で登場人物の会話を書く時よりも、僕は漫画のネーム、というのはいわゆるフキダシの中に入るキャラのセリフのことだが、これの語尾一つ決めるのにかなりの時間がかかってしまうことが多い。なぜなら漫画のネーム、つまりキャラのセリフや口調はキャラクターそのものともいえるからだ。原作の仕事は極論すればこれを書くだけといってもいいくらいだろう。

 

ま、僕の場合は場面設定から人物や小道具の配置、動きまで全部シナリオに書き込むことが多く、ただでさえ手間はかかるのだが、ストーリーの流れはとうに出来ているのに、わずか2~3行のキャラのネームが決まらなくてそこで原稿が止まってしまい、そのまま朝まで唸り続けるなんてことは、ざらざらにある。もちろんそこまで苦労して考えたネームでも、出来上がった作品を見たら漫画家さんにごっそり変えられていたなんてことも、この仕事にはよくある話だが()

 

話を戻せばこの『マルモの掟』という作品は、いかにもそこらへんの説得力が薄っぺらい。適当にこういう展開でマナちゃんにこういう芝居をさせれば客は泣くだろう、といった卑しい根性がだんだん鼻に付く。特に僕が鼻白んでしまったのは、阿部サダオ扮するマルモこと主人公のマモルが、親友の忘れ形見の幼い姉弟を引き取る決意をする辺りから。『パパと呼ばないで』にはまだ、血縁という縛りがあったためにさほど不自然ではなかったが、このドラマではそこをどう見せるのだろうと実は僕は少し期待していた。

 

甘かった。別に大した葛藤もなく、彼は犬に叱られて子供たちを迎えに行くのだ。マモルが親戚に引き取られた子供たちを見送ってから、家に戻って10分くらい悩み、そうしてやはり子供たちを引き取ろうと決意して家を飛び出し、走ったら親戚の車に追いついたのはまあ、愛嬌としておこう。多分マモルは昔、野球選手だったから、いまでも時速70キロくらいで走れるのだろう。わからないのは、親戚が育てるはずだった子どもと、どうして赤の他人のマモルが同居できることになったのかという部分である。

 

彼は里親経験者でもなければ急死した親友に遺言で何か頼まれていたわけでもない。ただ幼い姉弟たちがマモルと暮らすことを望んだという描写はあったにせよ現代社会、普通それでは通らんやろっ! と言いたくなることが、このドラマの中には多々出てくる。僕なぞ、そういう箇所が出てくるたびに引っかかってしまい、ここでどういう解釈をすればこのキャラのこの行動は成立するのかなんてことを考えてしまうのだが、ドラマの方は、まあまあ、そんな固いことは考えんと、ほらほら可愛いマナちゃんの泣き顔を見て感動してくださいな、とでも言われてるようで、おまえ、脚本をナメるなっ!() と思わず怒鳴り出したくなるような衝動に駆られる。

 

というわけで、僕は本当にこのドラマには当初期待しただけに、大きく失望した。中には、いやいや私はこのドラマで毎週感動してついもらい泣きしてしまいますんですぅ、なんて人もいるかもしれない。僕はそれはそれで個人の趣味嗜好の問題だと思っているし、ここでいろんなことを書いてはいるがあくまでこれは、僕個人の考え方であって、これを読んで不愉快になる人は読まない方がいいだろうと思っている。少なくとも僕は、僕がここに書いた内容に関して誰とも意見の交換をするつもりはない。

 

そうあらかじめ断った上で言うけど、やっぱり最近のドラマはどんどん劣化しているという印象が、僕には強くある。視聴者が考えたくないことは考えさせないようにしているし、難しい状況や事情は何の説明もなく省いて、それでよしとしている。この社会がいま何を産み出しているのかという考察などいっさいない突然変異の絵空事のような犯罪を追いかける刑事たちのコントのような芝居を見て、大人の男は普通そんなものを刑事ドラマなんて呼ばないのだが、雑誌や新聞を見るとそんな番組にさえ刑事ドラマという呼称が与えられていて、甚だげっそりした気分になる。

 

そのくせ人は感動だけはやたら求めたがっているらしく、あの『仁』でさえ正直言って今期の作品のレベルは最初のシリーズに比べて明らかに落ちている。理由はいずれまたまとめるけど、一つ言えることは話を急いで安っぽい感動を詰め込もうとしすぎているんだな。前回丁寧な作りに感心した部分が今回はすべて荒っぽくて雑。現時点ではちょっと残念で、僕なぞこのままでは仁よ、おまえもかと叫んで、1分で感動させろみたいな陳腐で安っぽい話のジャンルに振り分けて後は見ないという状況に陥らないかと危惧している。相変わらず視聴率はいいらしいが。

 

僕だってヨーロッパ映画よりはハリウッド映画を見て育ってきた。概ねわかりやすくて面白いからだ。後悔先に立たずと言うが、いま少し反省している。そこそこ難しいことは、もっと頭の柔らかい時期に見聞きしておくべきであったと。でなければ人の頭はどんどんあほになる。みんながあほになってしまうと、自分が多少あほでも安心するからね。あほの連鎖。だからたとえば、いま福島で起きていることや起きてしまったことに、日本のテレビドラマのレベルが低下してきた影響は関係していないだろうか、とかそんなことばかり最近の僕は気になって、物書きの端くれとしては忸怩たる気分に陥ってしまう5月の終宵。

 

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