今期は当たりか否か!?
ドラマの話なんだけど、今期はもしかしたら久々の大当たりかも知れない、などと2、3日前くらいまでは妻にも宣言して、日本ドラマやりゃあできるじゃん! などとはしゃいでいたのだが、よくよく考えてみれば案外そうでもなかったなと。そういう話
もう何年か前から基本的には(もちろん面白ければ例外はあるにせよ)ドラマでコントを見る気はないので、どんな評判の新番組でも、あ、これ、コントだったんだと思った瞬間にチャンネル変えるかテレビを消すことにしている。おかげで結果的に時間の浪費になるようなドラマを見続けなくて済むようになったが、逆にシーズンによってはあっという間にこの国のドラマでは何も見るものがなくなってしまい、少し寂しい思いをすることもある。
ところが今期は、なかなか国産のドラマも頑張ってる。ように思えたのが、まず最初に一月くらい前、たまたま偶然、BS放送の方で見つけた『鈴木先生』というドラマ。なんだか正体不明のタイトルにつられて第1話を見てみたら、いきなりハマってしまった。
これって一応ジャンルは学園ドラマで、しかも強いて言うなら熱血教師ものの範疇に入るのかも知れないが、いままで数十年来、このパターンの王道は金八先生しかなかったところに、この『鈴木先生』は久々に、教師ドラマの描き方を別の視点で見せてくれた。
しかも登場する人物が主人公を始め全員、どこか微妙にねじれている。だが職員室に集う教師たちそれぞれのねじれさ加減も、現代という時代設定のフィルタで見れば、案外そこらへんにいそうだなと思うくらいにはリアル。何より主人公のクラスの子供たち(中学生)も、金八のように乱暴な言動だが根は素直で優しいなんて、結果的にじゃあいい子なんじゃん! と言いたくなるような生徒はまず出てこない。
むしろ一見、いい子に見えても何かのスイッチで簡単にキレたり壊れたりするし、ただし彼らもキレた自分を正当化しようとするのがこれまた実にいまっぽく、その理屈も大人には屁理屈としか見えないものばかりだとしても、そのいかにも最近の子どもが言いそうな理屈こねの嫌あな感じも、実にぞぞけだつ具合に仕上がっている。なるほど、いま中学の教師になるということは、こんなガキどもとつきあわねばならないってことなんだと思うと、暗澹たる気持ちに襲われてきていっそ心地よい。
このドラマではキレた子どもが後で改心したり謝ったりなんかしないし、めでたくチャンチャンと終わる結論的光景も見られない。いま書いたように、彼らには彼らしか理解できない理屈ではあっても、ちゃんとキレる理由があってキレているからだ。だから鈴木先生も彼らの理屈を否定もしなければ髪の毛かきあげて諭しもしない。そんな特性を持った子どもと、そのクラスはどんな具合に折り合いをつけていくかという、その過程が描かれるだけだ。
日本のドラマでストーリー展開を見ていて興奮させられるというのは近年希有な経験。しかもその内容たるや、生徒が妊娠したとか校内暴力がどうとかいう大所高所な話ではなく、給食から酢豚がなくなることは是か非かみたいな、実にしょぼいことなのだ。ところがこんなテーマが『鈴木先生』にかかると、下手すれば学校の存亡に関わるようなドラマチックな見せ方をされてしまう。いやあ、なかなか勉強にもなります()。そんなわけで、僕がいま毎週最も楽しみにしているドラマになってしまった。
毎週楽しみにしているBS放送と言えば、何とBSフジがやはり7月から『北の国から』の再放送を始めた。僕は人には倉本聰の大ファンと言っておきながら、告白すると実はこの作品だけは一度もちゃんと見たことがなかったのだ。僕は大家のファンを広言して、実はその人の代表作を知らないということが時々あるな。高校の頃から司馬遼太郎ファンだと言ってたのに『竜馬がゆく』を読んだのは30越してからだった、とかね。
もちろんいままで断片的に何話目かを見たことはあるし、スペシャルはほぼ全話見てるはずだが、肝心の本編を1話から見る機会はなぜかずっとなかった。だいたい昔はまだDVDとかそんなのもない時代だったから、1話を見逃すと連続物の場合、そのままずっと見なくなるなんてことがとてもよくあったんだね。テレビ局が番組改編期に、他局の新ドラマの第1話が放送されるのにぶつけるように強力な特番を仕掛けてくるという姑息な慣例はだから、あの頃から始まってる。いまはぶつけられる他局も特番で対抗してくるから、結果的にドラマの1クールの放映回数は少なくなるわ、内容はバランスの崩れた拙速なものになるわ、そして番具改変期にはどうでもいいスカスカの特番が並ぶことになってしまったが。
もしかしたらこれが最後の機会かも知れないと思い、今回は1話からちゃんと録画して見ることにした。このドラマは見た人も多いだろうからあえて多くは語るまい。一言で言うなら倉本聰という作家の一つの頂点を、僕は初めて目撃した気分になった。
役者のそれぞれのキャラの存在感、演出、そして脚本の語りのうまさ。晩年を迎えた倉本さんの作品を僕はあまり面白いと思ったことはないけど、いま見る『北の国から』は、もうひれ伏すしかない完成度だ。なるほど、これは国民ドラマになるわと、あらためて感じ入った次第。
最近、マルモリダンスとかで話題の子役のカップルなんざ、改めてジュンとホタルに会ってみれば、比べるのも申し訳ないくらい、格が違う。もちろんそれは決してマナちゃんたちのせいではなく、あのドラマの脚本の安さに起因するものだ。日本のテレビドラマがまだ、真面目にドラマを作ろうとしていた頃、一人『北の国から』に限らず、他にも面白いとまでは言えなくても、とりあえず最後まで見られる、つまり大人の鑑賞に堪えうる作品は他にもいっぱいあった。もうね、日本のドラマは下手に電波の無駄遣いするようなドラマを作るくらいなら、あの頃のドラマをいっそ再放送してくれと切に願う。なんかね、今期特にひどいと思ったのは、なんで同じ番組をこんな毎日やってるのかと思ったら、実は全部別の番組だったという、女の子が男装するシチュエーションのコントとか、そういうやつのことを指して言っとるんだがね。
今期、1本だけ突出している異端の作品をあげておく。フジで放送している『それでも生きてゆく』とかいうタイトルだったな。もう疲れてしまったのでこれ以上書かないけど、凄いっちゃ、凄い。もちろんいい意味で。もともと満島ひかりという女優さんが僕は最近気になってるので、彼女目当てに見たのだが、まあ女優陣の芝居の濃さ比べだけでも一見の価値はある。以前にも書いたけど、僕は子ども殺しをするドラマは原則的に嫌いだし、たいていは子ども殺しのインパクトだけを利用しようとする唾棄すべき卑しい作品も一杯あるのでなるべく見ないようにしてるのだが、この作品はまあ、いまのところ納得がいっている。ま、これがどのように終息を迎えるかによって、また評価はかわってくるかもしれないが。
あ、それと父親役の時任さん、女優陣+柄本さんがうまかったのに比して、絶望的に下手()。そう言って気を悪くされるなら、基本的に爽やか顔の時任さんにあの役は合ってないと言っておこう。彼には今度なでしこJAPANが映画化される時の佐々木監督役でもしてもらって、いまからでも遅くないからせめてあの役は佐藤浩市クラスに変更してほしい。だって、あれもかなり重要な役どころでしょうが!?
ま、そんなこんなで今期のドラマは豊漁かも知れないと思ってたら、実は本放送で評価できるのは『それでも生きてゆく』1本だけだったと。……でも日本のドラマで、1本でも見られる作品があるのはまだしもだって、言わなきゃならない状況が続いていることが一番悲しいのかと、大自慢ブラザーズ風に思ってみたりする。
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