おとうちゃんが死んだ(T.T)
いつかこの日が来ることは予想していたことであったが、とうとうお父ちゃんが死んでしもた。
自分ではもっと号泣するかと思っていたが、意外に平然と受け止められたのは、もう先週の頭くらいからある程度、覚悟はしていたからかもしれない。
まあ、それにしても『カーネーション』、12月に入ってまるで太平洋戦争開戦の記憶に合わせたかのように時代は戦争モードに突入し、それにつれて話もどんどんと重く、暗くなってくる。今月になって視聴率が少し落ち込んだのもわからんでもないが、まあ朝から暗い話なんぞ見たくもないという客は放っといたってかまやしない。てか、そういう客はいわゆる朝ドラのファンであっても、ドラマという創作ジャンルのファンというわけでもなかろう。
何度も言うが、僕はこの時代になってもますます目が離せない。いままでイケイケで生きてきた糸子が、日本が戦争という大状況に突入したことによって、初めて人間関係に傷つき、持ち前の反骨精神さえ時代の重苦しさによって押さえつけられ、しかも彼女自身はそんな中で妻として母として、さらに一家の大黒柱として身も心も安まる暇がなく、その彼女の周囲に次々と苦難も降りかかってくる。もうこの脚本と演出には圧倒されっぱなし。そんな中で、親父が死んだ。大丈夫か、糸子!? 思わず声を掛けて、抱きしめてやりたくなる。いらんって、はねとばされるだろうがな。
思えばあの親父には、いろんな目に遭わされてきた。糸子だってあの親父のせいで何度泣かされたかわからない。でも親父は親父なりに糸子のことを考えていたという部分もほの見えて、微笑ましくさせられたこともあったし、かと思うと、また家族の心をどれほど傷つけても絶対に折れない頑固さを発揮したりもした。そして晩年、ようやくそれなりに穏やかな性格になってきたようにも見えたが、これはね、僕らの世代の息子や娘たちくらいまではかろうじて納得のいく、「昭和の親父」の姿なのだ。
たとえばあの親父の姿を、キャラがぶれてるなぞと言って、あの脚本は下手だなんて感想書いてる人をどこかの掲示板で見かけたような気もしたが、ま、僕自身も含めて人がどんな感想持とうがそれは勝手だからいいけど、ああ、でもこの人はちゃんとしたドラマをほとんど見てこなかったか、漫画しか読んだことのない人なんだろうなという二次感想を持ちました(^_^;)
漫画を作る場合のキャラ至上主義は、僕はいままでにも何度か折あるごとに批判してきたから繰り返さないけど、確かに漫画の場合はキャラがぶれると困ることが多いし、実際、悪役で作ったつもりのキャラが時々中途半端にいい奴になったりするのは話としても書きにくい。だが実写ドラマは、生身の人間を使った表現が可能なので、実に幅の広いキャラクターを見せることが出来る。極端な話、ドラマは登場人物の葛藤を描くものだと規定すると、まったくブレないキャラって葛藤するわけないから、そもそもドラマが作れない、なんて本末転倒な話にもなってしまう。親父や糸ちゃんのキャラがぶれてるなんて批判した気になってる人は、持ち込まれた漫画を見て、キャラが立ってないねえ~なんて言って悦に入ってる一昔前の編集者と同じである。
人はぶれるからこそ人なのだ。ちゃんとした脚本は、そこを逃げずに書く。ただし下手にぶれさせると、ほんとに正体不明か印象の薄いキャラになってしまうリスクもある。つまり力のない作家はぶれないキャラを書かせている方が楽だし、安心。キャラの深みを書ける人は、相当力のある人と言って間違いない。正直言えばね、僕にはそこまでのキャラを描く自信はない。だからまだまだ軽漫画のシナリオを書いてるわけです。
さっき書いたことに補足すれば、あの手の頑固親父は僕らの世代はまだぎりぎり見かけることができた。少なくとも、親父と言えば恐いもの、という感覚が体のどっかに染みついている人にとって、糸ちゃんの親父はまったく現実に存在した人である。実を言えば、僕の父にもあの親父と似た部分があった。うちの妹にもう少し根性があったら、僕は家の中でリアルカーネーションを見ることさえ出来たはずだが、あのドラマのファンの人にはそういう感覚で見ている人も多いと思う。あの父親は、家族に見せる強さと、自分自身の抱える弱さのせめぎ合いも含めて、どこか郷愁を覚えさせる由緒正しい「日本の親父」の姿である。
その親父が亡くなった。きっかけは不慮の事故だが、これも僕の父の場合と似ている。しかもドラマでは、先々週のラストに、いったんこのまま死ぬのかと思わせておいて、週明けに何とか命がつながり、まだ予断は許さんなあと思っていたら、金曜あたりにすっかり元気を取り戻したように見せておいて、もしかしたら何となくこのまま当分いくのかなと思っていたところに、いきなりスコーンッと・・・。これはもう、その回を見てた人ならわかる通り、ドラマの前半にいわゆる死亡フラグがばんばん立てられていたから、僕はああ、これはヤバイなと思っていたら本当にやられてしまった。
小林薫って僕は特にこれといって好きという印象はない役者さんなのだが、この親父役は凄かった。ま、このドラマに関しては他のキャストもみんな凄いんだけど、糸子と親父の丁々発止が、このドラマの中盤をまったくダレさせず、飽きさせもせずに引っ張ってきたことを考えると、本当に大したものだ。あらためてお疲れさまでしたと言いたい。
一つ苦言を言えば、今週の最終回、つまり土曜放送のラストで、善作の幽霊を出したのはちょっといただけなかったかなと。ここまで毎回、ほぼ完璧な脚本だったのに、どうしてここで安い大河ドラマみたいなことをしたのかと疑問に思った。僕はドラマで安易に幽霊表現を出すことはどうしても趣味に合わないのでね。ところがこれは、実は原作にもちゃんとあるシーンらしい、ということをネットの情報として書いてる人がいた。コシノママは、このとき本当にそんな体験をしたらしいと。……じゃ、まあしょーがないか(^_^;)
« 迷宮の中を行く快感 | トップページ | 次から次へと死んでいく(T.T) »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 新番組雑感その1『DOCTORS』(2015.01.18)
- 最終回2本(2014.12.20)
- 健さん死すの報に触れて(2014.11.20)
- 今期のドラマは・・・(2014.10.27)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント