溜め録り一気見!
東京から戻って少し気分が落ち着いてきた。たちまち連載の〆切がもう来てるので、これをこなさなきゃ。そんな状態というに、帰ってきて撮りためておいたドラマの類が気になるので、片っ端から見ておく。おかげで寝不足。仕事、また遅れそう。自業自得。
最初に『R1グランプリ』を見たのは楽そうだったから。ただしこれが始まって以来、おおむね僕は毎年チェックしてるけど、今年はいままでで一番つまらなかった。一人芸というのは落語と同じで、その気になればどんな宇宙的空間でも客に向かって繰り広げることができるのに、なんだかだんだん単に一発ギャグあるいはお題に沿ったテーマギャグを幾つ客に提供できるかを競うようなショーになってきた観がある。
だったらR1なんてたいそうな舞台を設定しなくても、もうレッドカーペットのような1分芸で十分。優勝はcowcowの空豆みたいな顔をした人だったが、技巧だとか間だとか言う前に、こうなると単に趣味の問題じゃないのか。それなら僕はまだ、日本のことわざに一部英語を紛れ込ませるヒューマン中村のフリップ芸の方が笑った。「クララがtap dance!」……確かに。
『運命の人』は最終回スペシャルでほぼ2時間枠。始まった頃はかなり面白そうだと思ったものだが、それは日本の民放テレビなぞで本格的な政治ドラマを見せてくれるという期待感込みでのかなり上げ底な話。最終回でずいぶんと情緒的な話に流れてしまったきらいはあるが、沖縄の問題をとりあえずおさらいして見せたという意味では、ぎりぎりOKというべきか。
本来あの物語は、時の権力に睨まれて前途ある人生を完全に破壊されてしまった男の悲劇が描かれていたはずだ。それが中盤以降は利用したのされないのでうだうだ言い合う男女の愛憎劇がクローズアップされる形となり、政治ドラマとしては何とも中途半端なものになった印象がある。そもそも主人公、裁判が始まってからは一向に腰が落ち着かず、家にも帰らずに始終どっかふらふらしてるし。
あの事件をオンタイムで見ていた僕などは、権力が、具体的には自民党の政治家たちが、保身のためならどれほどえげつないことを平気で行ない、国民の目から真実を隠し、または国民を騙して平然としていられるかということを、これは当時の報道などではなく何となく体感的に感じ取っていた。あの頃、政治家と言えばうさんくさいものと相場が決まっていたし、実際にほとんどの場合そうだった。
だから70年代ヤングの僕などは、物心ついた頃から権力者の言うことはまず疑ってかかれという感覚がどこか体に染みついてしまっている。と言って一世代上の闘争と挫折も目にしているから、無駄に戦わないという諦めの良さも僕らの世代の特徴かもしれない。続に三無とかシラケといわれる世代の最初が僕らの年頃あたりであろうと思う。
無気力無関心無感動というのは当時の大人たちからつけられたレッテルで、思春期真っ盛りにあって猿のようにせんずりばかりしていた僕らが無気力無関心無感動なわけはもちろんないのだが、当時の大人たちにしてみれば、若者は世の中の不正や矛盾に対して怒って戦うべき存在だとでも定義していたんだろう。僕らが怒りもせず戦いもしなくなったのはその大人たちが反面教師になってくれた要因もかなり大だと思うのだが。
僕自身は、怒りや戦うことに関して無気力無関心無感動であることは、すぐれて誇るべきことであると思っていて、多分僕らの世代が戦争を起こすことはまずないだろうからというのがその理由だったが、僕らよりやや若い世代あたりから、何だか雲行きの怪しい人をよく見かける気もする。世の中の流れというのはシーソーのようなものだから仕方ないと思ってしまうのも、三無世代の特徴だろうか。このままじゃ僕らは還暦過ぎたら全員鴨長明になりそうだ。
『運命の人』の話に戻ると、終わってみればあれは、僕の評価的にドラマとして決して面白い作品とは言えなかった。なんだか登場人物のセリフにも建前論が多くて魅力を感じ難かったし。ただし日本人が知っておくべきことはそれなりに押さえられていたと思う。いまの沖縄の問題、その原点はまさに、佐藤栄作と自民党が国民に真相を隠し続けて行なったいびつな沖縄返還に端を発しているからだ。
真実を隠し、どれほどの証拠があっても嘘をつきとおす政府と、それによって人生を翻弄される国民という構図は、自民党政権が終わっても変わっていないということが、このドラマを見ていて古さを感じさせない理由の一つではある。溜息の理由でもあるが。
『ストロベリーナイト』もいつもの1時間をちょい超え枠で最終回。原作にもある「ソウルケイジ」編で、実は僕はこの原作を読んでないが、原作のシリーズでもかなり人気のある話らしい。それでかどうか、確かに凝った展開、二転三転する真実、明かされる真相に思わず涙してしまいそうな結末など、面白い要素はもうごっつぁんと言いたくなるくらいてんこ盛り。3週にわたっての話だったがそれも納得の重量感だった。
この作品に関しては前にも書いたけど、よくある刑事コントドラマじゃないというだけで安心して見られた。最近安心して見られるドラマの本当に少ないことか。たとえば同時期、日テレ系では永作博美をヒロインにした女刑事ものをやっていたが、あれなんか始まって5分で見るに耐えなくなって切ってしまった。『でかわんこ』の方が笑って見ていられる分、遙かにましである。
『ストロベリー』は視聴率もそこそこ良かったようで、『カーネーション』が高視聴率をキープしているのと同様、実は視聴者は案外、ちゃんとしたドラマを作れば見てくれるんじゃないかという希望を持たせてくれて、僕なんかには嬉しい。ただ、ちょっとドラマでウケたからって、すぐ映画にするのはどうかと思うが。『ストロベリー』も映画化決定なんて最後に告知してたけど、この作品は映画にするよりとっとと第2シーズンの放映を急ぐべきだろう。
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コメント
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Uji親分、宇宙戦艦ヤマト2199の映像と音楽が
インターネットで5分くらいと10分、観れますぜ。
なんぼ文句言うても西崎氏も故人やし、観たら、
もう、涙もんです。たまらん。詳しくはwebで。
宇宙戦艦やまと2199で検索です。
投稿: Takaishi | 2012年4月 1日 (日) 04時40分
まちごうた。やまとじゃなくヤマトです。では。
投稿: Takaishi | 2012年4月 1日 (日) 04時42分
Takaishiさん、こんにちは。
ヤマト2199の監督は知り合いで去年も一緒に新宿で飲みました
僕がこの世界で信用している人間はそう多くはありませんが、僕の信用している人間はほぼ間違いのないものを作ります。彼は信用できますよ。しかも下手な脚色はせず、原則的にオリジンヤマトを忠実に再生するというアプローチは、極めて正しい。
ということはヤマトはオリジン以降、いままでさんざ下手なものばかり見せられ続けてきたけど、ようやく初めて期待できそうなヤマトが作られたということです。来年以降に予定されているテレビ放映が待ちきれなければ、ぜひDVD購入を検討してみてください。その価値はあると思います。
……ただし、買ってみて失敗したと言われても、当方は一切責任は持ちませんが()
投稿: ujikun | 2012年4月 2日 (月) 04時48分
はぁ~い。 (おどけてますが、しっかり受けました。)
投稿: Takaishi | 2012年4月 2日 (月) 10時39分