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春を待つ手紙

だんだんと夜にエアコンをつける時間が減ってきた。風呂から上がっても、あさぶさぶさぶさぶぅ~と言わなくなった。何より同じ薬の量を飲みながら、朝の僕の血圧の数値が若干下がってきた。
 
春が近づいている。
 
『カーネーション』は夏木糸子の味が出てくるかどうかがポイントだと思う。まだ夏木さんはもしかすると尾野糸子に遠慮しているような、という言い方が悪ければ、尾野糸子のイメージを壊さないように芝居しているような、そんな感じがする。夏木さん自身もどっかで「アウェーの気分」なんて言ってたくらいだから、相当やりにくいとは想像に難くないが、僕はむしろ夏木さんの演じる糸子を見たいと思っているのだから、そこは割り切ってどこかで開き直ってほしい。
 
心配しなくてもあのドラマは、歴代のキャストがみんな怪演することがそのまま見事に快演につながるような、そんな奥の深い脚本で出来ている。キャラの作り込みがはんぱねーということだ。こんな構造を持つ脚本、僕の記憶にある限りでは、ほとんど向田邦子以来といっていい。
 

もちろん今朝のオンエアも、婆さんとなった糸子の相変わらずのきつさと優しさを描き、ちょっとほろりとさせる。ラストの場面とナレーションで、ああ、そういや糸子は周防さんが一人で長崎に帰ると三浦さんから聞いて、思わず「さびしいないやろか」と泣いたのだったなあと、思い出してしみじみした。
 
このところNHKは震災から1年ということもあって、連日プライムと深夜帯に311特番を、NHKスペシャルなどの形で放映している。全部は無理だが仕事の合間などにちらちらと見てしまうと、あっという間に1時間目が離せなくなる映像なども満載されている。はっきり言って一晩に津波関係の映像を2時間見るだけで息が詰まるし、仕事は手につかなくなる。
 
だけど同じ国に生きる人間の一人としては、直接体験しなかった人間であろうと異世代の人間であろうと、何度でも何度でも繰り返しそのことに思いを致すべき記憶というものがあって、その最たるものが僕は太平洋戦争に関するすべてのことだと思ってきたけれど、今後はこれに東北震災が加わった。この2つのテーマをNHKが本気で執念深く追いかけていってくれてる限り、僕は無駄に受信料を払っていないという気持ちになれてありがたい。
 
NHKが被災者の生活をレポートする特番をやっていた時間、民放では見事に全チャンネル、ひな壇に芸人がずらりと並んで全員似たような顔で大爆笑とやらをしていた。それはそれで明るい気分になって楽しいと思えることもある。だけど僕は、泣きたい気持ちで冬を越えてきた人々の手紙を送り続けるような番組も、見たい。
 

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