ルパン実写化希望!
朝起きてテレビをつけたら、ちょうど小倉さんの『とくダネ!』をやっていて、広い田園地帯の道の上に、電信柱がバタバタと折り重なるように倒れている映像が映っていたのだが、それは先日日本列島を襲った爆弾低気圧とやらの被害の爪痕をアマタツがレポートしていたところであり、うわあ、こりゃあすげえや、見ろよおい、あのプレハブなんてまるで何かにねじ曲げられたように潰れているぜぇ、なんて膝を叩きながら感心し、うひゃあ、あの田んぼの中の道なんか俺も自転車でよく似たとこ走るけどさぁ、あんなとこでその爆弾低気圧とやらに出くわしたら逃げようがないねえ、ほら、あの交差点なんて角のガソリンスタンドの形まで、俺がしょっちゅう走ってる道にそっくりだ、へえぇ、日本てのはよく似た町並みがあるもんだねえ、いったいどこだい、あそこは? 群馬か? 栃木か? なんて言ってたら、隣町の近江八幡の光景だった。
来週からは学校も始まり、本当は春休みのうちに今年こそ妻をどこか温泉でも連れて行くと先月あたり約束して、妻はその日を楽しみにるんるんと待っていた様子であったが、結局仕事が終わらずに今度も単なる口約束となってしまっていた。これで連続三年以上、夫婦旅行はなしである。無論、僕も忸怩たる思いはあるが、仕事が終わらんもんは仕方ないもんね。
ただし、この一週間はやたら天気が悪く、爆弾低気圧騒動やら天候不順が続いたことこそ文字通り天佑というもの。僕はにわかに元気を取り戻し、ほらね、こんな時期に動かなくてよかったろ? これこそ怪我の功名って奴さね。となれば、僕の仕事が遅れたために旅先でえらい目に遭わずに済んだ、つまり結果的には助かったのだ。という論法で妻を慰めてみたが、なんだか逆に機嫌を損ねたような気もする。
まあ、せめてもの言い訳にと、今日は全国で天気が大荒れで、爆弾低気圧発生の恐れもあるためなるべく外に出かけないで注意しろと『とくダネ』でアマタツが叫んでいる日に、妻を誘って近江八幡のマイカルへ映画を観に行ったのが、その当日のこと。確かに出がけはけっこう風は強かったが、これから台風が来る手前、くらいの感じで、しかも映画を観終わって外に出てきたらすっかり薄日も差して風も穏やかになっており、なんだよこれ、どこが爆弾低気圧だ、滋賀県は全然関係なかったんじゃないかよ、などと妻に言いながら車を運転して帰ってきた。
僕らが映画館の中で画面に集中していた頃、外では電信柱がバタバタ倒れ、プレハブがバキバキ吹き飛ばされてたってことですな。どうやら。
マイカルで観てきたのは『シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム』。ホームズ映画といえば正当から変化球までいろいろあるが、基本的にどの作品もキャラのお約束さえ押さえてあれば、たとえネス湖で恐竜を発見しようと、少年時代にミイラの呪いと戦おうと、OK。その約束とはすなわちホームズは常に沈着冷静でクール、あらゆる真実を推理だけで見破る頭脳を持ち、ワトソンは真面目が取り柄の愚鈍なる友人という設定だ。
ところが今回の新ホームズシリーズは、一応原作の設定には幾つか則っているものの、キャラそのものに関してはもうかなり反則ギリギリの線を飛ばしており、これはミステリの古典を映画化したというよりは、ホームズというキャラを使用した冒険活劇映画になっている。はっきり言ってこれをホームズ映画の仲間に入れていいのかどうかさえ迷うくらいだ。
というのも僕は御多分に洩れず少年時代はホームズとルパンに熱中した口で、以来数十年、この二つのキャラの名前がタイトルにつけられた映画の場合は、たいてい劇場へ観に出かけていたのだが、この一番新しいホームズシリーズは予告編を観た瞬間に、こんなのホームズじゃない! と断じて結局無視してしまっていたのだ。
今回、だからこれを観ようと思ったのはまったく、この悪天候に負けてたまるかと無理矢理八幡に出てきてしまった偶然のせいである。
しかもマイカル、滋賀に越してきた頃は田舎にもこれだけ映画館があれば十分じゃないかと、9つくらいスクリーンのある劇場に感激していたものだが、何の事はない、実は春休み夏休み冬休みのたびに、その前後1ヶ月くらいの期間も含めて、つまり1年12ヶ月のうち半年以上くらいの印象で、ふと映画を観に行きたくなってマイカルの上演予定を調べてみれば、わずか9つしかないスクリーンのどうかすると3つずつくらいの劇場ががどらえもんだのしんちゃんだのわんぴだのらいだーだのの類で占められいて、大人が観られるような作品をほとんどやっていないということに気がついてしまった。
いまはまだ春休みの時期で、どらえもんだのウルトラマンだの長靴の猫だのガキ向けもといっ、お子様向けプログラムで溢れていて、こんなラインナップの中でどれか選べと言われたら、このシャーロックホームズが、一番まともに見えてしまったのだからこれもまた怪我の功名って奴かも知れない。
別に無理して観なくてもよかったはずだし、しかも僕は平生、六道四生順逆の境を大事にしている人間だから、シリーズの1作目を観ずに2作目を観るなんてこと、普通僕の行動様式から考えられなかったのに、どうせガキ向けジャンルにひとからげに売られるような作品だし、夫婦割引で二人で2千円なら失敗してもそんなに悔しくないかと入ってみたのだが。これがまあ、大正解だった。
いや、好き嫌いはあると思う。最初に幼少時からのシャーロキアンとしての僕の感覚がこれを拒否したように、僕の、あるいは私のシャーロをあんな最低な男にしやがって! と憤る向きには絶対これ、ダメだろう。だけど、たとえば幼少時にルパンシリーズの『奇巌城』とかあんなの読んで大ファンになり、ルパン派かホームズ派かといえば断然どっぷりルパン派だったくせに、テレビアニメで始まった『ルパン3世』を見たら一発で許してしまった僕のように節操のない性格の人間なら、これは楽しめると思う。
はっきり言って、冒頭のツカミでぐいっと引き込まれ、クライマックスまでほとんど息をつかせぬ怒濤の展開でホームズとワトソンコンビの冒険が繰り広げられる。これ、僕が20代だったらあと3回は劇場へ観に行っていたな。ちょうどあの『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』を観たときのように。いまはもう、そんな無駄な人生の時間がないので諦めるけど。
そう、これはホームズ映画というより、インディ・ジョーンズだと思って観た方が間違いがない。しかもワトソンくんはもちろんのこと、ハドソン夫人やレストレードなど、シリーズおなじみのメンバーもちらちらっと出てくる。中でもホームズの宿敵モリアーティ教授がね、あまり凄みはないんだけど、なかなか興味深いキャラ設定で、クライマックスのシーンでは原作の同じ場面を思い出し、そうか、ホームズはこのためにそうするのかと思った瞬間、不覚にも瞼の裏がじわっと熱くなってしまった。
というわけで、インディが素直に楽しめる人なら、この映画は十分お勧め。ついでに言えば、もうこの国では第1シリーズとカリオストロ以外、まともなキャラとプロットに会えなくなってしまった『ルパン3世』シリーズを、僕はぜひこのスタッフに実写映画化してほしい。泣きたいことにこと映画に関しては、アメリカ人しか信用できない!
ほんとにね、日本人は絶対ルパンの実写化だけには手を出さないで欲しいと願うのは、僕は念力珍作戦の恨みを40年くらい経ってもまだ忘れてないからだが、多少妄想的に言えば、この映画、ノリはかなりルパン3世である。そもそも変装マニアのホームズからしてあのいいかげんさとかっこよさはルパン的なキャラだし、相棒のくそまじめなワトソンが狙撃の名手という設定は……やっぱり何かクサイと思わないか。おあつらえ向きに峰不二子のようなキャラも出没するし。
というわけで、いまの仕事を片付けたら、僕は早速レンタル屋に行って1作目の作品を借りてくるつもり。ただしいまのところこの仕事、いつ終われるかは定かでない。
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