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私はあなたの幽霊です

いろいろ差し迫ってきたので、先週あたりからもうレッド・アラート。夜ともなれば飲みにも出かけず、ほとんど無言の行状態。でも人と喋っているから仕事が進まないのかと思ってたら、黙ってても仕事は進まないという単純な事実に気づいただけであった。
 
一昨日の夕方、自転車で出かけようと中庭に出たら、2軒隣の家の幼稚園児が自転車に乗ってちょうどうちの玄関の前を通り過ぎた。
 
幼稚園に通う前は日中も中庭にたむろしたりして、僕が玄関の前で自転車の整備などを始めると、駆け寄ってきていろいろ外出の邪魔をしてくれた子だが、最近は顔を合わせる機会も減っていた。久しぶりだなあと思って、よお、元気かあ~? と声を掛けたら、その子は顔をうつむけたまま「今日は、遊んであげられないの」と呟くように言い残し、向かいの同年配の子がいる家のドアをピンポンしにいった。……俺、あいつに何だと思われてんだろ
 
昨日は一週間ぶりに合気の稽古。このブログも時々覗いているという師範のN先生が準備体操しながら「うじさん、最近何かお勧めの映画ってないですかあ」といきなり聞かれる。
 
こんなときにぱっと2、3本もタイトルが思い浮かべばいいのだけど、最近はそれほど大量に作品を見ていないのと記憶力がだんだん怪しくなっていることもあって、すぐには出てこない。ま、師範の質問もあまりに漠然としすぎていて、どう答えていいものか迷ったこともあるが。てゆーか、うちの稽古風景、ちょっとゆるすぎね?
 

週末の夜中に見た『ゴースト・ライター』は、公開当時あちこちでいわゆる玄人筋による絶賛コメントや紹介記事も多く、じゃあ劇場へ見に行くかと思っていて結局果たせなかったといういつものパターン。
 
僕も一応ほめるけど、面白かったかと聞かれるとやや微妙。てゆーか、一緒に見ていた妻は早い段階で爆睡していた。一般的に面白い作品かどうか判断するときには、この妻指標がかなり参考になる。彼女が最後まで寝なかった作品は、かなりの確率で面白いといえるからだ。
 
僕は落語ファンだの落語通を気取るつもりがまったくないから、俗に名人と言われるような大ベテランの落語ってあんまり面白いと思った覚えがない。たとえば談志を名人だという人がいて、いや、かなりいっぱいいるだろうけど、僕は談志で笑わせてもらったことは、笑点の司会時代以来ほとんどないのだ。ただ、談志の確かにうまいよなあ、と思わされる部分は一応わかる。
 
この「うまさ」に痺れるという人は、僕なんかより遙かに落語を堪能しているといえるだろうけど、まあ別に僕は無理にそうなりたいとも思わない。もしかするといろんな落語を見続けているうちに、ほう、昔は特にどうとも思わなかったが、還暦を過ぎてみればこの噺家のここの語りは、何とも風情のあるものよ、なんて境地に至るかもしれないが、それはそうなったときの話でいい。
 
これと同じようなことは、映画なんか見ててもしばしばある。つまり画面を見ていて、さすがに名匠と呼ばれる人の映像は違うなあと思うことはあっても、映画全体としてはけっこう退屈だったりすることがままあるわけだ。昔、ヴィスコンティの映画なんか見に行ってた頃は、ほとんど大学の授業を受けに行くつもりで行ってましたな。
 
もちろん名人だからという理由で、必ずその作品が退屈なわけではない。でも僕は、大した技なんか持ってなくていいから、どんな素材を扱おうと、とりあえず客が払った料金分くらいは楽しませてやろうと手慣れた芸を見せる職人的監督の方が好みだ。昔はそんな監督は日本にも世界にもいっぱいいて、はずさない映画を見たいなら役者よりも監督の名前で見に行った方があてになった。ひところ僕が監督名をよく覚えていたのは、もともとそういう理由だ。先日亡くなったトニー・スコット監督なんかも、僕は打率の高い職人監督として記憶している。
 
で、ポランスキーの『ゴースト・ライター』。この人が職人的冴えを見せるのは『ローズマリーの赤ちゃん』みたいに、じわじわと迫ってくる正体不明の恐怖感の描き方とか、『フランティック』のように、異邦人が見知らぬ土地で事件に巻き込まれたりして、そのわけのわからない混乱と不安を描くときだろう。多分それは、この人が幼少期からそういう人生を送ってきたことに深く関わっていると思うけれど、今回のこの映画でもこれらの要素はもう、お腹いっぱい、がっつり盛りこまれてる。
 
とにかくのっけから映し出される不吉な感じがいい。僕なんかはこのつかみでいきなりもってかれた。あとは監督の手のひらの上でころころ転がされるように身を委ねて、本当は凄く単純明快なのに、終盤まで誰の身の上に何が起きているのかよくわからないという、どこかつかみどころのない話を楽しむだけ。僕はそうした。だって下手に考えようとしたところで、どうせよくわかんないし()
 
主な舞台となるのはアメリカ沿岸のどこか離れ島にある田舎町。この監督はアメリカに行ったら必ず逮捕されて50年くらいぶちこまれる身なので、まさかアメリカでロケはしてないと思うが、本編全体を通してどんよりと厚い雲に覆われた感じがするのは、この島の風景が後を引いてるせいだ。も、なんだか全編がワイエスの絵みたいに荒涼感満載で、もうその絵を見たときにね、ああ、ポランスキーも名人になったんだなと思ったものさ。
 
ちなみに、俺ってこんなに芸術的な監督なのさという腕を見せようとする名人のタイプではなく、職人気質を残したまま進化したポランスキーのこの作品を僕は確かに気に入ってる。でも、人に勧めて高率で面白いという反応の返ってくる作品ではないと思うので、勧めない。
 
登場人物は誰もが陰鬱な顔で腹に何か隠していそうな連中ばかりだし、どんよりとした風景の中で、話自体は極めて静かに淡々と進む。そのうえ謎を解く鍵はさほど難しくもなく次々と手に入るし、あっと驚くトリックやどんでん返しがあるわけでもない。でもそこが、ある意味ではリアル。スーパーヒーローなんか一人も出てこないが、だからラストシーンのあの静かな衝撃が、凄まじい破壊力を持って迫ってくる。そりゃ現実はこうなるよなあという……。
 
サスペンスなので内容には触れないが、罵倒する気の作品ならそんなことおかまいなしに僕はけっこういろいろ書いてしまうからなあ。面白いかどうかは微妙などと言ったけど、ここらへんの僕の態度から、悪いけれどそんな気持ち、察してほしい。
 
ちなみにタイトルは、ユアン・マクレガー扮する主人公のゴースト・ライターが、その自伝を書くことになったイギリスの元首相ピアース・ブロスナンに初めて会ったとき、自己紹介で言うセリフ。この映画には随所に示唆的なセリフが組み込まれていて、それがまた物語全体をびしっと締めている。ちなみにマクレガーが演じる人物本人の名前は、ついに最後まで出てこない。ただしこれは、本当のゴーストは誰かという話でもある。
 
一通り見終わって僕は、ああ、でもイギリスのような独立国家であれば、あの秘密はあれほどの大問題になり、かつ、絶対に明るみに出せないということで、あのドラマのようなことは起こりうると思ったが、たとえばこの国じゃあなた、戦後の自○党政権なんてもろ、○○の○○みたいなものですからな。国民の方だってそういうもんだと承知しているから、別にあの映画のようなことがあって明るみに出たとしても、誰も驚かないような気がする。
 
そうか。最初僕がこの映画を見てすぐにぴんとこなかったのは、日本人独特の「どーせ」根性のせいだったかもしれない。

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