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狂戦士の迫力

ここ数年は、いわゆるジブリ映画くらいしか、ちゃんと劇場へ出かけて観たアニメ作品の記憶がない

 

だからWOWOWでオンエアしたものを録画していたこの作品を見たとき、これは劇場へ出かけておくべき映画だったかなと、ちょっと反省した。この数年、日本製の映画でちゃんと劇場で観るべきだったと反省したような作品などほとんどなく、いわんやアニメをや。

 

そのタイトルは『ベルセルク』。僕はこれ、7、8年くらい前までは原作のコミックも買っていて、確かその頃に一度テレビでもアニメが製作され、そのアニメの出来もなかなかよかったという記憶はある。ただ問題はね、いつ終わるんだこれ!?

 

原作は白泉社のコミック獣だったか獣コミックだかそんなタイトルの雑誌に連載されていたものだが、実は僕、この話が始まる前に一度そこで書いたことがある。そのとき組まされた新人は生き残ってるかどうか知らないけど、いずれにせよそれほどぱっとしなかったから、僕がそこから依頼の来ることはもうなかった。

 

こっちも仕事をした頃はこの雑誌がまだ創刊されたばかりで、はっきり言って海のものとも山のものともわからず、しばらく送られてきていた雑誌のラインナップを見て、まあ、それほど長くもつ雑誌でもないだろなんて思ってたりした。

 

まさか、そんな雑誌からこんな趣味性の強いメガヒットが生まれるなんて、当時は想像もしなかった。ただしこの作品、いまでももちろん連載中とは思うが、その連載たるやまったく気まぐれで、一度雑誌で見かけたら次はいつ載るかわからないような連載、そもそもそれを連載といっていいかどうかさえ真面目な連載作家の僕は思うのだけれど、そんなあれだから僕はこの作品を雑誌で見た覚えはほとんどない。まあ、単行本を出せばめちゃ売れるから、許されてる階層の一人なんだろな。

 

だいたい僕はこの人の絵柄にもストーリーにもまったく興味はなかった。どういうきっかけだったか忘れたが、これの単行本を買ってきて読み始めたのは妻が先だったのだ。どこが気に入ったのかと聞くと、だって絵がうまいからという。

 

彼女はときどき、クイズ、火サスの真犯人、社会情勢などについて、いきなり脈絡のないとんでもないことを言いだしてるのに、なぜかそれが案外真相だったりするという、きついまぐれ能力を持っている。このときも僕は、こんなごちゃごちゃしたすぷらったな絵のどこがいいんだ? と鼻で笑いながら彼女が買ってきた本を読み始めたら、いつの間にか僕の方がハマってしまっていた。あの絵をうまいと言える妻は、案外たいしたものである。

 

ただね、我慢がきかずに先に投げ出すのも、たいてい彼女である。『ベルセルク』も単行本14、5巻くらいだったか、いわゆる「蝕」のイベントを終えてしばらくしたあたりで「私はもういいわ」と宣言してこの漫画との縁を切った。僕はもう少し我慢して、何とか20巻くらいまで読んだような気もするが、やはりそのあたりで挫折。それまで集めていた単行本すべてまとめて叩き売りに行った。

 

いや、読めば確かに面白いんだけど、とにかく次の単行本がいつ出るかわからない。予告では来年の春とか書いてあったのに夏になっても出ないなんてざらにあり、もういいかげんにしてくれ! ということで、つきあいきれずに読むのを止めたというのが真相。

 

あっ。・・・・・もしかしていまオレは、天に唾したな()

 

だから映画版の『ベルセルク』だって、仮にDVDで集め始めたって、絶対完結編まで作り続けられるわけがない。テレビアニメ版と同様、「蝕」まで描いたらそれきりだと思う。『STAR WARS』がEp.IVの「新たなる希望」とEp.Vの「帝国の逆襲」だけで終わるようなものだ。こんな中途半端な気持ちを抱えて、あんた、生きていけるのかって話だ。

 

そんなマイナス要素を抱え込むことになるのは重々承知の上で言えば、原作のファンはこの映画、見て損はない。僕はもう原作の世界観を知ってるので、原作をまったく知らない人が初めて見て楽しめるかどうかはちょっとわからないが、随所に挿入される中世ヨーロッパ、多分暗黒時代と言われたあたりの戦闘場面などの迫力は、いまのアニメでここまで表現できるのかと、その演出と技術に感心した。僕の家のテレビも小さくはないが、これはぜひとも劇場で観るべきであった。つまり、スクリーンに耐える画面クォリティを持っているということだ。

 

この映画を見て、せっかく手放した『ベルセルク』、また最初から読みたくなってしまった。しかし自分で叩き売った単行本、自分で買い戻してたらアホだしな

 

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