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そろそろエンジンかけないと…

もう五月〆切の仕事があるんだから、まずいなあとは思いながら、まだどこか酒が残ってる感じがするのは相当肝機能が落ちているのか、あるいはまたぞろ仕事したくない病がぶり返してきたせいか。まあだんだん体に無理の利かない年頃になってることも自覚させられてはいるのだが。

 

こんな頭がぼうとして働かない時には、小難しいこと一切考えず痛快作品を見るに限る。というわけで何週か前、京都放送で録画しておいた『兵隊やくざ 脱獄』

 

京都放送が木曜にやってる映画の放送枠は『中島貞夫の邦画指定席』と称し、かつての日本映画黄金時代の作品をめいっぱい見せてくれる。特にこの番組が嬉しいのは本編オンエア中は一切CM中断を入れないこと。ここが『兵隊やくざ 脱獄』『兵隊やくざ 大脱走』と、2週にわたり放映してくれた。僕は両方とも未見なので、実に嬉しい。どうせならシリーズ全作通しで特集してほしかったが、まあ贅沢は言うまい。

 

実際この20年くらいは、この作品に比較できる程度に面白い日本映画なんてほとんど記憶にない。これが1960年代とか70年代になると、ごろごろあった。特に僕は大映のファンで、雷蔵、勝新あたりが主役を務めたシリーズものはほとんど外れがない。ま、そんな知ったかな口をきいてるけど、実を言えば大映の雷蔵、勝新にハマったのは大学に入って以降の話で、オンタイムでは彼らの活躍をほとんど知らなかった。なぜかって? 坊やだからさ。

 

僕を映画好きにしてくれたのは、間違いなく父親の影響があるわけだが、と言って僕が小学生の頃に見たがった映画は、たいていアニメ映画だった。ご多分に漏れず、僕も東映動画で劇場デビューを果たしているのである。僕の記憶が確かなら、最初に映画館で見た映画は東映の、てゆーか、あの頃アニメ映画なんて東映しか作ってなかったけれど、とにかく『ガリバーの宇宙旅行』という作品だった、と思っている。

 

「と思っている」と書いたのは本当にそうかどうか記憶があやふやなので、あんまりやりたくはないけどいまちょっとウィッキーさんで東映動画を確かめてみたら、なんと『ガリバー』の公開は1965年であり、僕はその前(1963年)に公開された『わんぱく王子の大蛇(おろち)退治』『わんわん忠臣蔵』も見た記憶があるから、てか、どっちも大好きな映画だから、もしかすると初めて映画館、という記憶は間違いかもしれない。

 

ただね、僕らが子どもだった昭和40年前後の頃って、けっこう学校で子どもに映画を見せたからね。一学期に一回、すなわち学期末ごとくらいの割で僕らは体育館に集められ、町の映画館から来た映写技師による学校映画会を楽しんだ。だからもしかすると『わんぱく王子』も『忠臣蔵』も学校で見せられたという可能性はある。

 

ちなみに僕が父と『ガリバー』を観に行ったとは書いたが、正確に言うと父に連れられて映画館へはちょくちょく行ったけれど、父と一緒に映画を見たわけではない。というのも父は僕に映画を見に行くかと聞いて僕が二つ返事で行きたい行きたいと答えると、僕と町の映画館に出かけ、そこで劇場に僕を一人残して外で用を済ませると言って出て行き、映画が終わった頃にまた僕を迎えに現れるということを繰り返していた。

 

父は、母がよく嫉妬して夫婦げんかの種になるくらいもてた人だから、いまから思えばロマンチックな想像の一つもしたくなるけれど、いずれにせよそんな父のおかげで僕は映画、というか作られた物語を楽しむ少年にできあがっていったわけだ。

 

だからまあ、そんな僕がアニメを徐々に卒業して(結果的には今でも卒業できてないが)実写映画の方に移行していったのは怪獣映画のブームが到来したおかげであり、といって僕は『ゴジラ』にはあんまり萌えなかった。ミニラとか観に行った記憶はあるけどね。あの頃、僕の心を鷲づかみにしたシリーズは2本あって、これらの新作が公開されると逆に僕は父にせがんで映画を見に行くようになったが、この2つともが大映の作品だった。『大魔神』と『ガメラ』シリーズである。僕の大映ファン歴は、だからこの頃から始まる。

 

ただしその頃はまだ、『眠狂四郎』『座頭市』も同じ劇場にポスターは貼ってあるものの、まったく興味を引くこともなく、それどころか特に勝新の作品なんか、やたら汗にぬらぬらと光る、むくつけき男の裸を強調してるイメージがあって、まったく苦手であった。ほんとにね、あの頃『兵隊やくざ』の風呂場の大乱闘シーンとか見てたらきっと吐き気を催してたと思う。

 

僕が彼らの作品を知り、傾倒していったのは、上京して大学生活を始めてからのこと。きっかけは池袋にあった文芸座という名画座だ。ここは洋画専門の文芸座と、邦画専門の文芸地下という2つの劇場で構成されていたが、この文芸地下では毎週土曜の夜、一般上映が終わった夜の9時過ぎくらいからオールナイト、つまり朝まで日本のプログラムピクチャー5~6本を一挙上映するという企画で人気を博していた。

 

当時池袋の近くに住んでいた僕はここへ通い、平日は文芸座で洋画の名作を、土曜の夜は文芸地下でB級邦画をという具合に、映画をシャワーのように浴びて暮らす時期があった。まあ、大学時代は付き合う女とかもいなかったし、そもそも大学へもあまり熱心に行かなくなっていたからね。

 

で、このオールナイト企画でも大映のシリーズは結構人気があったのだろう、何かというと雷蔵特集、勝新特集がよく組まれ、僕は20を超えてようやく彼らに巡り会い、少年の頃からの大映ファンとして、何か故郷に帰ってきたような感慨に浸ったものだ。こともあろうに、その大映が潰れるなんぞ、まったく予想もしていなかったが。

 

『兵隊やくざ』は中でも異色の名作である。日本軍の内情をリアルに描いた傑作は他にもあるけど、それがリアルであればあるほど、主人公のような人間はまず生き残れるわけがない。現に他の作品ならたいてい主人公は死ぬか殺されるかするだろう。しかしこのシリーズの主人公大宮は死なない。なにしろ肉体が石で出来てるみたいに頑健で、ほとんど不死身。その意味ではファンタジーのようなものだが、これを勝新が演じると何となくありそうな気がしてくる。役者の肉体とは、要するに説得力なんだな。

 

いま考えている時代劇のプロットが、この『兵隊やくざ』にインスパイアされたものになりそうな予感。気の弱い侍と、無敵のやくざ男のバディストーリー。そんな話をちょっと作ってみたいといま思っている。

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