偽医者がバレたわけ(^0^;)
昨日のニュースだったかで、八王子で診療所を経営(!)していた人物が無資格医業、つまり偽医者として逮捕されたというニュースをやっていた。
偽医者事件というのは僕の印象では割とちょくちょくあって、そんなに珍しい話でもないと思っている。ただ、僕が毎週見ている『雲の階段』の主人公は偽医者でありながら、都内の大病院の副院長にまでなるという話で、どうもこの展開が嘘くさいとかリアリティがないとか言って嫌う人がいることを、この番組の感想サイトで知った。
ま、もともとがただの「お話」だから。あまりそこに目くじら立てる必要もないとは思うが、リアリティ云々を言うなら、少なくとも30代後半にもなったような女が普通にチェックのミニスカはいて女子高生として高校に通うような話よりかは、よほどリアリティがあるだろうよ()
もちろん僕はリアリティ云々だけでドラマを見てるわけじゃなく、リアリティを吹き飛ばす面白さがあればそれで満足する類いの人間だが、『雲の階段』がよくできていると思うのは、そのあたりの理由付け、主人公を含む登場人物たちそれぞれの腹の中、思惑などが丁寧に描かれ、ほとんど違和感なくこのドラマに引き込まれていったからだ。これに比べりゃ『24』のジャック・バウアーの方が遙かに、おまえ、なんでそこでその選択をする!? と言いたくなるようなことだらけだ。
少なくとも今期においては、どの局もカスのような設定のドラマか、設定はそれほどカスでなくても登場人物にカスのような芝居をさせているラインナップがずらりと並んだ中で、僕の目にとまった限りではこの『雲の階段』は極めてまっとうなドラマに見えたし、実際今期、毎週録画している国内ドラマは『あまちゃん』を除けばこの1本だけである。一部で評判を聞く『家族ゲーム』は、もろこの『雲―』の裏番組だったので、あいにく一度も見ていない。
しかし僕が好むドラマはつくづく低視聴率になるらしく、この作品も視聴率が伸びなくて打ち切り決定なんて話も聞いた。打ち切りも何も、話はもう8話くらいまで進んでんだから、あと3話か4話くらいのものだろう。下手すりゃ収録だって終わってんじゃないのかと思ったのだが、なんと一昨日第9話を見たら、次回予告の第10話で最終回ときっちり出ていた。あちゃあ、ほんとに打ち切りなのか。
こういう場合、関係者はたいてい意地でも打ちきりとは言わず、最初からの予定通りなどと白を切るのが常だが、この9話を見るとね、ああ、これはもう次回あたりで話を畳もうとしてるな感がバレバレである。
とにかく展開が急で荒い。この9話で起きる様々なエピソードの展開と、それに対する各キャラの動きやら行動やらが、下手な漫画でも見ているように薄っぺらくて、いままでこのドラマでは感じたことのない、見ていてちょっと恥ずかしくなるような行動やセリフが目につき始めた。もちろん中年女の女子高生コスプレドラマ(しつこいか!?)は見た瞬間から恥ずかしくて5分と耐えられなかったが。
『雲の階段』が視聴率を取れないというのは、わかる気もする。このドラマが扱っているのは、単純に善悪で割り切れない話だ。視聴者はこのドラマを見ながら、突きつけられてくるテーマに対し、自分の頭で考えて感想を持たねばならない。もちろんその正解がドラマの中で明示されるはずもなく、あるいは主人公が声高に啖呵切るような陳腐な展開もない。
でもそれは、いまの視聴者にはドラマの楽しみ方としてしんどいことなのかもしれない。ドラマとは本来、葛藤を描くものだと僕は思っている。なぜなら人生が葛藤の連続だからだ。でも、その葛藤そのものがもう、いまはウケない。もしかしたら現代人は、現実生活における葛藤が、許容範囲を越してしまったのではないかとさえ思う。だから人はせめて「作り物」の世界くらい、何も考えないで楽しめるものを求めるようになった。ちょうどハリウッド映画が、ニューシネマの時代を経て、CG使いまくりのアクション大作かSF大作かファンタジー大作だらけになってしまったように。
ただ、アメリカはそれでもテレビドラマの世界などでは、まだまだ現代社会に対して骨太な態度で切り結ぼうとしている作品もある。日本のドラマの世界では、皆無である。ま、今期、僕の見た範囲内での話だけど。実際、そんなドラマをやろうとしても乗ってくるプロデューサーやテレビ局はうちの国にはもうないのかもしれない。おかげで良質なチャレンジ精神のある作家ほど、はやばやとテレビに絶望して小説家になるか、あるいは自分で映画を撮るようになる。案外いま、国産映画はメジャー系の作品でなければ拾いものがありますぜ。
僕が良質と思うようなドラマがテレビから駆逐されていった後、テレビは芸を見せない芸人と本業が少なくなった役者のバイト先となった。ひな壇とやらでタレントがだらだら話をする類いの番組を、僕はほとんど見ることはないが、クイズ番組は時々つい見てしまう()。どうかすると民放全局クイズ系の番組が並ぶ日があったりするけど、あれが視聴者に好まれるのは、白黒はっきりとした答えが明示されるところにもあるのではないか。
ドラマに置き換えて言えば、視聴者はわかりやすい話を求めている。誰が正義の味方で誰が悪か。それが明示されないと視聴者は、ドラマの登場人物に感情を乗せられないか、少なくとも不安になるのだと思う。ある意味、俺が正義だ、ついてこい! みたいなキャラでないと安心して物語を楽しめなくなっているとか。でもさ、それって一個の人間としては、思考停止しているに等しい。
『雲の階段』は今期珍しく、いい部類のドラマだったのになあ。9話を見る限り、凄く主人公がわかりやすくなってきてちょっとがっかり。どうも来週の最終回もそんなに期待できそうにない。『ガンダム』が打ち切りで話数を縮めたのにあの感動のラストでまとめてしまうという、案外話を短くしてよかったんじゃないかと思える奇跡はたぶん起きないだろう。
でも、1年の間に最低視聴率と最高視聴率を経験したという長谷川くん、今回また最低の方の冠を増やすことになるのかもしれないけど、彼の外科医はありだと思う。もし浦沢さんの『モンスター』を実写化することがあれば、主人公は是非彼でお願いしたい<(_ _)>
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