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定番の群れ

それにしても、今期の新番組、やたら刑事と医者ものが多い。

 

とはいえ、ほとんどいままでどこかで見たようなタイプで、あまりこちらの食指を動かしてくれるようなものがない。

 

内容が、という意味ではない。もうね、主人公のキャラがまことに類型化していて、登場シーンを見れば、その後の展開はだいたい予想がつくなんてドラマ、そろそろいいかげんに考え直せよ……と、実は30年くらい前から僕は密かに思い続けている。

 

つまり一番類型化したキャラが、懲りもせず顔と名前と性別を変えて繰り返し出てくるのが、この国における刑事ドラマと医者ドラマなのだ。

 

DMATだっけ。いわゆる「瓦礫の下の医療」を行う医師を主人公にしたドラマも、言葉は目新しいがキャラにまったく興味が湧かない。演じている役者のせいかもしれないが、そんなこと言い出したらそもそも日本のドラマで、リアルなドクターやナースを見た記憶は、リアルな刑事を見た記憶がないのと同じくらいにないわけだから、まあ日本のドラマでこの二つの職業をやる場合はこんな程度であることを最初から覚悟しておく必要がある。

 

瓦礫の医者の裏番組がちょうどこの、天海祐希を主演にした刑事物で、実は僕は天海祐希の女刑事は相当いい線行くのではないかと、十年くらい昔から思ってた。

 

ところがその彼女を女刑事に据えた缶コーヒーの商品みたいな名前のドラマが、僕は第1話をかなり期待して見て、冒頭からただのコントドラマであったことに気づいてぶっ倒れてしまい、確かあのシリーズは最初の5分くらいしか見てないけれど、今回はチャンネルも違うし、ちゃんとした彼女の使い方をする気であえて刑事物に再挑戦させたのではないかと。そんな期待をしてしまう僕は、やっぱりもう少し日本のドラマには頑張ってほしいと思ってるからなのだな。

 

そういう期待はものの見事にまたも裏切られ、相変わらず第1話の冒頭では、緊迫感もリアリティもへったくれもない犯人が人質取って何のかんのという場面から始まり、そこに颯爽と現れた女刑事がとりあえず一人で事件を解決することでまずキャラを立てるという、40年前にダーティハリーが確立した手法を、いいかげんまず捨てろよ! と思ったりするわけだ。ちなみに主人公が女性の場合のつかみのキャラの立て方は、刑事ドラマの場合、このように人質事件を解決するのが主流となっており、これがただ奔放なヒロインを表わすだけなら、物語の冒頭でとりあえず木に登らせるというNHKのお家芸のようなつかみ方もある。

 

何にせよ『取調室』だっけ? タイトルからしてちょっと期待しちゃったんだよね。ものすごく緊迫した刑事と犯人の取調室の攻防を中心にして、緻密なプロットと謎解きドラマが見られるのではないかと思ったものだから。うん、そんなの夢物語だろうとはある程度覚悟していたけどさ。あそこまでださくなきゃ、なんとか頑張って最後まで見てあげたのに。

 

意外と最後まで見られてしまったのは、檀れい主演の久々倒叙推理もの。檀れいが探偵役で、ま、はっきり言えばまた日本のテレビドラマ史に加わった『コロンボ』の末裔の一つということになる。ただこれは僕は最後までそう苦にならずに見ることが出来た。倒叙ものはもう犯人と動機と殺害方法はわかってるわけだから、とにかく探偵役のキャラと、毎回の犯人役の豪華さとかが勝負である。とりあえず第1話は僕的には合格。

 

ミステリとしてよく出来てるとか思ったわけじゃない。たとえば犯人を落とす切り札となる部分のネタは、古畑任三郎のスペシャルで僕が唯一面白いと感じた、さんまが犯人役で出演したときの話と構造的には同じ理屈である。僕はあのスペシャルをミステリとしてよく出来てると思ったが、もしかしたら三谷さんも何か元ネタがあって書いた話かもしれない。それはそれでいい。

 

檀れいのドラマのキモは、檀れい、いくつか知らないけど、多分年齢的にはけっこうもうおばさんと言われていいような年かもしれないと思いつつ、彼女が可愛いことだ。もちろん刑事などにはまったく見えない。ただし、このドラマの場合はヒロインが刑事らしく見えることはさして重要ではない。それよりもこのドラマの作り手は、明らかに檀れいという中年女性を、萌え要素満点の外見キャラにすることで、かなり意図的にそっちの趣味のある視聴者を取り込もうとしている。現に僕は取り込まれたからね

 

対太にも書いた通り、あの主人公は去年の秋に深夜アニメでやっていた『境界の彼方』という作品のヒロインに似ている。ショートめのぼさぼさヘアスタイル、眼鏡、無表情。アニメの方は、何か気に入らないことがあるとぼそりと呟くように「不愉快です」と口にするが、檀れいも犯人に迫りながら、疑問点が浮き上がるたび、無表情に「不思議です」と呟く。もう、絶対意識してるとしか思えない。

 

それでも僕はこのドラマを今後も見るだろう。『古畑』の時には、田村正和の作り上げた特異なキャラが邪魔をして、ミステリそのものの謎解き、いや、謎解きはどうせ大したことはないのだが、その謎を間に挟んだ探偵役と犯人役の攻防の妙に集中することができなかった。西村雅彦とか、もう画面にちょろちょろ出てくるだけでうるさいと思ったし。

 

その意味で今度の檀れいは期待できそう。いまのところ今期唯一の毎週予約決定のドラマである。

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