天下御免の猿芝居

大阪の市長？　だったか、何かやってる橋下さんと、ある種の国辱集団の会長なる人物が会見したとかいうニュース映像を見た。

まあ、一言で言えばあんな気持ちの悪い映像を、よく公共の電波で流したものだなという感想しかない。登場人物が二人とも人体そのものから相当に気色の悪い状態になっていたこともあるが、確かニュースのタイトルは橋下がそのなんとか会の代表と会見したということになっていたはずだ。

どういう経緯であの会場がセットされ、しかも机を互いに数メートル離して配置するという形式が決められたのかは知らない。知らないけどあれはあの舞台設定からして、あらかじめ何らかの意図が働いていただろうことは予測がつく。

始まってみれば、双方が何だかよくわかんない罵り合いを数分しただけで終わってしまうという、ある意味、意外な展開ではあった。意外というのは、誰が書いた筋書きだったにせよ、少なくともそこそこ大きな町の首長を名乗る人物が、まるで３歳児のような様相を全国にさらして平然としていること自体もそうだけど、そのことをあまり突っ込む声が聞こえてこないということに、もうね、あ～あとか思っちゃうわけだ。

驚くのは、橋下さん、あの代表をよく怒鳴りつけたな、なんて、もしかしたら本気で感心してるような人がいるなんて話が、僕のフォローしてる対太の話題なんぞで聞こえてくることだ。その感心してるという主旨から言えば、害毒会とかなんかそんな名前の団体に関していい印象を抱いていないということだろうから、普通の善良な感覚を持った日本人といえなくもない。が、そらあんた、善良すぎるだろ。

あれはどこからどう見ても、猿芝居以外の何物でもない。橋下はあの男に、マスコミデビューの場を用意してやったのだ。そのおかげで下手すれば次は、あの男はたか○ん委員会みたいな番組に出てくるかもしれない。でなきゃ橋下は、あれほど屁理屈だろうが揚げ足だろうがともかく舌だけはよく回るのに、あの団体に何ら有効な突っ込みをしなかったのはなぜかという疑念が残る。

そもそも害毒会みたいな名前の団体は、やってることをみれば犯罪集団と認定されてもおかしくない反社会的組織だ。少なくとも良識ある人間の認識はそうだろう。なのに、たとえば一地方の首長が、暴力団の主張を聞くために組長と公開記者会見するなんてことをやれば大問題になるはずだが、あの会見が全国ニュースになったことで、あの団体は世間的な認知度を高めてしまった。これは連中にとっては大きな宣伝効果になったはずだ。

いやいや、しかし市長との会見で、あんな態度を見せて逆に市長に怒鳴られたりして、全国にあの団体のトップのバカさ加減をさらしたんだからよかったんじゃないか、みたいな意見もあるかも知れない。それは根本的に違っていて、ああいう団体を支持する人間というのはヤンキーと同じで、もともと頭のねじがああいう風にできてる連中なわけじゃん。だからそういう人間にとっては、代表のあの態度はまさしく拍手喝采ものなのだ。

つまりあの団体は、はなから良識のある人間など相手にしていない。現時点では自分たちに興味のある人間が見てくれればそれでいいわけだから。問題は、たとえもともと悪意や憎悪とは無縁のはずだった人間でも、ちゃんとした歴史を学んでいなかったり、政治の不備によって社会的不満をため込んだ人間が、彼らの口車に乗ってしまうというパターンが起こりうることだ。その意味ではこの国の政府は、日々害毒会の予備軍を作り出すことに協力してるという面もある。

最近、あまり自分のブログで話題にするつもりがなかった政治や社会ネタに対する所感が増えてきてるのは、いままで基本的には安心していたはずなのに、この数年で、もしかしたらうちの国は良識を語る人間が少数派になるのではないかという恐怖を、じわりと感じ始めているせいだ。そんな事態になるのは恐いから、とりあえずそんな事態になるまでは、恐い恐いと言い続けておくことにしようと思っている。