ああ、勘違い

日曜はいつも通り合気のお稽古。長年、宿便のように糞詰まっていた原稿をいったん手元から完全に離したので、このところはほぼ休まず稽古に参加できるのが嬉しい。

この春に稽古を再開したのはほぼ１年ぶりなので、いつも使わせてもらっている体育館の管理人のおじさんも、いつの間にか代わっていた。入口で３００円の使用料を払うと、去年までの人は「いい汗流してくださいっ！」と、必ず声をかけてくれるのだが、なんかその声を背中に受けながら下駄箱の方に向かうと、妙に首筋のあたりがもぞもぞしたものである。

いや、そのおじさんは単にスポーツしに体育館にやってきた若者に（……若者じゃないな。もしかしたらオレの方が年上だわ、きっと（汗））、景気のいい気合いを入れてあげようとしているだけかもしれないが、何か来るたび「いい汗流してくださいっ！」つって送り出されると、中年専用のフィットネスクラブにでもきたような気分になる。どう考えても、合気術と「いい汗」はそぐわないぞ(￣｡￣;)

久々にその体育館に通い始めると、受付の事務所には例の「いい汗」おじさんではなく、なんかまた一回り、役所の体育課みたいなところで一通り仕上がりました感30％増量といった案配のおじさんが座っていた。今度のおじさんは「いい汗を！」みたいに無意味なキャッチフレーズのようなことは言わないので助かる。僕が行くとカウンターにスッと体育館使用申し込みの紙を出してくれたので、こちらは町外の人間の使用料である３００円を取り出す。このおじさんはお金を受け取りながら「今日はいま６人集まってますよ」と教えてくれた。

あ、そうですか。と、受けたものの、最初は一瞬、何の意味かわからなかった。よく考えれば僕は稽古に使う木剣と杖（じょう）を持っていたので、それで合気の関係者とわかったのだろう。そもそも日曜の夜は、合気の稽古以外に２階体育館を使うグループは滅多にいない。それでまあ、そのときはわざわざ仲間の集まってる人数を教えてくれるなんて、丁寧な人だなくらいにしか思ってなかった。

ところがである。それから僕は毎週、この受付するたびにこのおじさんから「今日は多いですよ、もう９人くらいいらしてます」とか「今日はまだ５人ですが、これから増えそうですね」などと集合人数を報告してもらうようになったのである。「今度の受付の人はねえ、行くたび集まってる人数を教えてくれるんだ。もしかしたら自分も参加したいとか、この会を応援してくれる気持ちがあるのかなあ」などと食事中、妻に話したところ、妻は箸を口元から離して、呆れたような表情でまっすぐ僕を見ると一言。

「あなたねえ、それ、先生と間違えられてるわよ」

えぇえぇえ～～っ！！！　そうだったのかあ～～～？？？

一昨日、稽古が終わった後に先生に聞いてみた。ここの受付の人、いちいち今日は何人集まってるとか教えてくれます？

「いいえ。全然」