週明けに図書館で『海舟座談』を借りてきていたのだけれど、これを借りるのはもう5回や6回ではきかない。
ま、これはいまやってる仕事でちょっと、海舟という人物がどんな人だったか知る必要があってのことだけれど、この『海舟座談』は明治期の記者、ま、編集者と言ってもいいかもしらんが、巌本善治という人が晩年の海舟の自宅に通い、死ぬ直前までの数年にわたる彼との会話を記録したものだが、これがめっぽう面白い。
どう面白いかというと、とにかくこの本の中の海舟さん、語っていることの8割は自慢話である。ま、巌本氏のインタビューが現在の政局に対するご意見の拝聴から、歴史的証言としての明治維新前後の話まで広がっているので、勢い維新の裏話、的な内容になればこれはもう、勝さんの独壇場になる。
いよいよ仕事を大詰めにしたい、とはいえ半年前に大詰めだったはずの仕事だけど、そんなこと言い出せば2年以上予定から遅らせてる仕事の話でもあるので、いまさら半年くらい何とも思わんが()、そんなわけで、最近はまとまった小説を読む気になれず、もっぱらエッセイとか雑学本とかその類のものばかり、いきおい読んでいることが多い。
最近のお気に入りは先日も述べたように向田さんを何冊か。この『無名仮名人名簿』はとりあえず僕が読み始めた彼女のエッセイの中では出色の面白さ。どれも短文だがウィットとユーモアに溢れ、中には一編の小説を読み終えたようなしみじみとした読後感に浸れるものもある。なにより文章が憧れるほどに美しい。久々に声に出して読みたくなり、実際に読んでみる。こんなときにふと思うのだが、僕はiPadを片手にそこに表示された文字を読みたいとは、どうもこの先もずっと思わない気がする。
声に出して読む行為というのは、あくまで本に対して行うもので、電子書籍の類のものは僕は本とは呼ばないし、認めてもいない。本とはたとえぬめぬめだのねちねちだのいってるエロ本であろうと間違いなく人類の歴史と叡智の集積の結果の一つであって、iPadだのスマホだののディスプレイに表示されているものは、あれは元を正せばただの0か1かのデータに過ぎない。
なあんて思い込んでる僕には、とりあえず死ぬまで守るであろう人生態度が幾つかあって、というわけでこのたび、その一つに「iPadで朗読はしない」という条項が加えられた。ま、ほかの条項はどんなものかと聞かれたら、たとえば国鉄のことは死ぬまでJRとは呼ばない、とかね。我ながらくだらねえなあと思うが、なに、こだわりなんてものはたいていくだらないものだ。そういや、
最近、渡辺あやさんがお気に入りの関係で、ちょくちょく向田邦子さんの本を図書館から借りてきては読んでる。今週は『眠る杯』というエッセイ集で……あ、でも別にこの文章、いま気づいたが、まったくつながってないな
渡辺さんの脚本から向田さんをイメージしてしまうのはあくまで僕の勝手な感想。僕は『火の魚』あたりで、なんとなくそんな匂いを感じ取っていたけれど、この『カーネーション』でその思いを強固にした。ただし『カーネーション』全体のイメージを見返してみれば、むしろ向田脚本の濃密さとはまた違う「かろみ」が目立ってくるし、僕は何も渡辺さんと向田さんが似ているなどと主張したいのではない。それでもあの物語前半の立役者、小原善作というキャラは、あれぁ僕の感想ではまるで向田邦子が乗り移ったか如き筆で描かれたように思える。
正直言えば僕は、向田さんの熱心なファンだったわけではない。あの人がぐいぐいと世に出て行く頃って僕の中学高校の頃だから、そんな年頃に見た『時間ですよ』や『寺内貫太郎一家』のインパクトが、いまに至るも残っているだけだ。そう、小原善作を見たとき僕が真っ先に思い出したのは、この『寺内貫太郎一家』だった。向田さんは自分の父親をモデルに、不器用な生き方しか出来ない昭和の頑固親父を描いたが、あの善ちゃんはまさしく昭和の親父のDNAを見事に再現していて、あんなに憎たらしくて愛しくて、どこか懐かしい親父はそれまで向田邦子のドラマの中くらいしか会ったことがなかったために、ついこんな連想になってしまったんだな。
金曜の昼間、数日前にAmazonで購入した本が届く。
いや、ほんとはさ、『カーネーション』のDVDボックスをAmazonで注文したんだけど、なにしろあれはまだ放送も終わってないし、とりあえず第1巻の発売は3月の末からになるらしい。当然予約注文という形になるが、もう構わないからと、注文してしまったわけですな。ちなみに第2巻以降の予約はまだ先になるみたい。
そのついで、というと語弊があるが、まあ、以前から買おうとは思ってたけど、この辺りの本屋ではまず売ってないだろう本を注文。東良くんの『東京ノアール』というタイトルだが、それが届いたので我慢しきれず仕事の合間にちょろちょろと盗み読み。あ、別に俺が買った本だから盗み読みではないか
ひどいもので、明明後日はもう正月だというのに、まだ仕事が終わっていない。そのうえレギュラーの仕事も年内にもう1本入れることが至上命題とされていて、せっかく普通の状態なら年末年始合併号とやらでこの時期、連載陣も一息つけるように(その1本分ギャラは減るが)なっているのに、「うじさんの場合、この年末年始とゴールデンウィークの年2回しか進行を少しでも正常な状態に近づけるチャンスはないんですから、休まないでください!」とか2代前の担当編集から代々同じことを言われている。
ふん。いまのペースだと次の原稿渡せるのは元旦の朝だ。ちなみにいまの言い方、元旦が元来「元日の朝」を指している言葉なのだから、眉間の間なんて言葉と同じくいっちょまえの物書きがやっちゃいけない表現なんだけど、あえて元旦の朝を強調してやるぜっ!
てなことを主張されてるような気分になったのが、先週から読んでる岡田斗司夫の『遺言』。僕はこの人の本はときどき読んでいて、それはこの人を好きとか信用してるというわけではなく、どちらかというと僕はその反対の立場で考えてしまうことの方が多いのだけれど、僕も自称アニメファンの一人である以上、長いことアニメにお世話になってきて、そのほぼ同じ世代で見てきた岡田さんの発言というのはやはり要所要所でトピックス的に気になることがある。なにしろアニメが熱かった頃、業界の中から見てきた人の一人には違いないし。
「新人ナースの仕事術」 陣田泰子 松本喜代子編
ま、仕事用資料です()。でも多分、新しい登場人物は、ナースマンになりそうな予感
「ナースの広場」 徳永進
再借り出し。同じく仕事用資料として。
「朽ちていった命」 NHK東海村臨界事故調査班
いまコンスタントに水準以上のドキュメンタリーを見せるテレビ局といえば、もうNHK以外になくなってしまったが、これはオンエア当時、様々な話題を呼んだ例の東海村臨界事故の、といってもしいまぴんとくる人がいなければ、ウラン濃縮作業をバケツの中で手作業でやってたおかげで、いきなり臨界がきて被爆しちゃったJCOの作業員が2人死んだ事件といえば覚えている人もいるだろうか。
あいにく僕はこれ、本編は見ていないが、こうやって文章にされたものを読むことで、実は映像以上に(だって映像では絶対流せないような場面のオンパレードだもの)リアルに迫ってくる描写がある。人が被爆してから死ぬまでという、その長いようで短い3ヶ月近くの記録を、もちろん救命のために死力を尽くす医師たちの対応も含めて、特に劇的にもセンチメンタルにも流れないように描いているが、それだけにその一人の人間が死んでいくまでの凄まじさには、言葉を失う。
この本は事故が起きてからの闘病記録にほぼ絞られているので、被害者がどのような事情で被爆したのかなど、会社側の管理体制などにはほとんど触れられていないが、一つはっきり言えるのは、少なくともこの事故を起こした会社には、放射性物質を扱う資格などまったくなかった。だが、そもそも放射性物質を扱う資格を持った団体、組織なんてあり得るのだろうか。
これは間違いなく、人災だ。しかし、その責を負うべき人物はもしかすると孫の笑顔に囲まれ、何不自由のない豪邸で暮らし、平和な一生を送っているのかもしれない。
『大人の流儀』 伊集院静
特に伊集院さんの愛読者、というわけではないのだが、これはたまたま昨日本屋に立ち寄ったら新刊なのか、妙に目についたので思わず購入。しかも新書なのでもう読了。僕などにはなかなかどれを読んでも爽やかなコラムであった()
『原発のウソ』 小出裕章
311以後、世間の見事な手のひらの返し方を実感しているであろう人物の一人が311以後に書いた本。知ってる人は知ってるだろうけど、多分いま原発や放射能関係のことを知りたいと思ったら、とりあえず信じられそうな話をしてくれそうな数少ない有識者の一人。ただし、
久々にアピアの3階にある本屋をちらっと覗いてから南蛮茶に入り、仕事……する前のウォーミングアップにまずソリテア……してたら妻が来て、一緒にコーヒー飲んで帰った。仕事1行も進まず()
今日アピアの本屋で買った本。
『ふがいない僕は空を見た』 窪 美澄
なんかタイトルとしての力の抜け方が気になって購入。予備知識は一切なし。帯に錚々たる作家さんの一行推薦コメントがついていて、こんだけの人がこんだけのこと言ってんだから、外れたらただおかねえぞって気分にはなれる。でも多分、まだ当分小説を落ち着いて読む気分にはなれそうもない。
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